グリーン経済成長が重要な理由
ドイツが国家として環境保護に力を入れていると言うと、「環境保護を重視する政策は、経済の発展にとってはマイナスになるのではないか?」、つまり「経済成長を目指す限り、ある程度環境に負荷がかかるのはやむを得ないのではないか」と思う人もいるかもしれない。
しかしドイツ人たちにとってはそのような考え方はなく、むしろ世界の人々に発想の転換を求めている。つまり環境破壊を伴わない方向に経済を改造するべきだというのだ。
ドイツ連邦環境局(UBA)は、「いまのような経済成長の仕方を続けていたら、人間の繁栄・幸福はやがて侵される」と断定する。
さらにUBAは「環境破壊に対する対策を取らなければ、気候変動と生物多様性の喪失が引き起こす損害の総額は、2050年には世界のGDPの4分の1に達する」とも予測している。
要は、地球環境を守るということが道義的な理由だけでなく、経済合理性の面でも必要になってきているということだ。
環境保護なくして企業経営なし
ドイツ人にとって、自然への愛情と環境保護への執着は、国民性の一つであり、重要なアイデンティティにもなっている。それだけに、ドイツでビジネスを行う際に、環境保護を無視することはできない。環境保護に力を入れない企業は、消費者から悪いイメージを持たれて製品が売れなくなり、売上高や収益が減ってしまうことにつながるのだ。
株式市場に上場している会社の場合、環境保護に力を入れていることを示さないと、機関投資家や株主、投資アナリストからそっぽを向かれて、資金が集まらなくなる危険もある。株主が背を向けたら、株価は下がる。最近の投資家は、ESG(環境・社会・ガバナンス)の原則を重視する企業への投資を増やそうとする傾向があるからだ。
投資家たちは、自分がお金を貸す企業が収益を増やすだけではなく、社会的な責任をも果たすことを求めているのだ。
たとえば企業が環境保護のための具体的な対策を行ったり、製品の安全性を高めるための改良を行ったり、コーヒー豆を生産している農家に公正な価格を支払ったりしたというニュースが流れると、株価が上昇した。このため、米国ノースウェスタン大学のケロッグ経営研究所のアーロン・ヨーン研究員は、「ESGは企業価値を増進する」と結論づけている。