金利が上がり始めても
「変動金利のまま様子見」が正解か

 しかし今では「金利が上がり始めても、固定金利に借り換えず、当面は変動金利のまま維持する」方が望ましい場合もあると考え直すようになった。

 なぜなら、短期金利と長期金利が同じような動きにならず、短期金利以上に長期金利が上昇する事態が起こり得るからだ。今回の金利上昇の前から、短期と長期の金利差は開く一方であり、その傾向が今後も続く可能性は否定できない。

 今後も従来同様、短期金利が0.4%、長期金利が1.0%程度であれば、将来の短期金利が0.6%以上高くなるリスクを考慮して、長期固定金利に切り替えるのも手だ。

 しかし、もし短期金利が0.6%、長期金利が1.6%程度まで差が開いてしまうと、将来の短期金利が1%以上高くなるリスクを考慮して、長期固定金利に切り替えるべきかどうかは微妙なところだ。

 その差が大きいがゆえに、消費者は固定金利への借り換えを決断しにくくなる。そして結局、ズルズルと変動金利を続けた方が得をすることになりそうだ。

 そのため、当面は借り換えについて検討していても、実際に踏み切る人は少数派だろう。業界全体で大きな動きは起きず、新規で借りる際に、どちらにするか悩む人が増えるという程度に落ち着くかもしれない。それでも、もし1%も差がついた場合は、変動金利を選ぶ人が増えるだけだろう。

 また今後、金利が上昇する局面では不動産価格が下がるケースもあり得る。この際は、借り換えよりも物件を売却して住宅ローンを返済することも有効な選択肢になる。保有資産が目減りし、金利負担が増えるのだから、売るのは合理的な決断の一つになる。

 さて、最後に念のため、金利の重要性について説明しておきたい。ここまで読んだ読者の中にも、「金利といっても微々たる割合だし、負担額に大した影響はない」と考えている人が多いかもしれない。

 このように、物件価格が10%高いことに敏感な人は多いが、金利に敏感な人は少ない。金利は1%の違いで返済額は約18%も変わる。金利が0.5%上昇したら、返済額は約9%上昇するのだ。

 金利による返済額の変化はこれだけ大きい。要は毎月の返済額がいくらなのかが最も重要で、それは物件価格と金利の組み合わせで決まる。

 これまでの金融緩和で物件価格が高騰したのは確かだが、金利が下がった分、トータルでは買いやすくなった側面もあることを忘れてはいけない。