リーダーなどの役職に初めて就いた際、難しく感じることの一つが「評価」だ。評価は昇給やボーナスなどの報酬に直結しているため、方法を間違うと部下が評価に納得しなかったり、平等に評価できないことにつながったりしかねない。『リーダーの仮面』の著者で、株式会社識学の代表取締役社長である安藤広大氏は、「好き嫌いをなくし、正しく客観的に評価することを徹底する」ための一つの結論として、「プロセス(過程)は評価しないこと」と指摘する。現代では、「プロセスを褒める」ことを是とする人が多い中、なぜ安藤氏はプロセス評価を否定するのか。本記事では、その理由や正しい評価をするポイントなどについて、本書の内容をもとにご紹介する。(構成/神代裕子)

会社では「プロセス評価」をしてはいけない
「褒めて伸ばそう」「プロセスを評価しよう」
こういった考えは、子育ての方法として取り上げられ、一般的になってきた。
この話を会社での上司部下の関係にも当てはめたのが、現在のプロセス重視のマネジメント方法であり、取り入れている会社も多いだろう。
実際、評価される側も「私は褒められて伸びるタイプなので」「結果は奮わなかったけれど、ここまで頑張ったので評価してほしい」と主張する人は少なくない。
しかし、『リーダーの仮面』の著者である安藤広大氏は、プロセス評価を真っ向から否定し、「小学生向けのマネジメント方法が、会社組織に当てはめられていることが問題」と言い切る。
その理由はなぜなのだろうか。
「褒められないと頑張れない」を許さない
まず、安藤氏は「仕事は勉強とは本質的に異なる」と説明する。
給料として成果を得ている以上、その給料に見合う結果を出すのは当たり前のことということだ。
確かに、当たり前のことをしているだけなのに、「褒められないと頑張れない」というのはいかがなものだろうか。
「プロセス評価」で部下の認識がズレる
また、プロセス重視の評価をすると、ある弊害が発生するという。それは「残業アピール」だ。
頑張っている姿を褒めるのであれば、「遅くまで働いている部下」も褒めなければならなくなる、と安藤氏は指摘する。
上司が残業している部下を褒めると、どうなるだろうか。
このようなことに陥らないためには、「プロセスへの介入は一切やめて、結果だけを管理する」ようにすれば良い、と安藤氏は語る。
確かに、「結果は出ませんでしたが、私は頑張りました!」という主張をいちいち評価していては、言った者勝ちになってしまう。
あくまでも、評価の基準は結果であるべきなのだ。
「あたりまえ」の基準は高く保つ
褒めることによる弊害も大きい、と本書では語られている。その理由はこうだ。
筆者も会社員時代はリーダーを経験したことがあったが、実際、与えられた業務を問題なくこなすという、「あたりまえ」のことをしただけで「評価してほしい」と主張してくる部下は少なからずいた。
「評価されるべきは、あたりまえ以上のことをしたときだ」と説明しても、なかなか納得を得られなかったことを思い出した。
これを徹底するためには、リーダーの普段からの立ち居振る舞いも重要なのだそうだ。
「リーダーの仮面」をかぶり、淡々と評価する。その姿勢を貫き通すことが大事なのだろう。
リーダーがすべきは「点」と「点」の管理
では、リーダーはどのようなマネジメントをしなければならないのだろうか。
安藤氏は、「『プロセス管理』ではなく『結果の管理』」が重要だと言う。それは次のようなものだ。
目標設定は必ず、「期限」と具体的な「状態」を提示すること。例えば「1週間後までに3件の契約を成約させてください」といった形だ。できるだけ数値化するのがポイントだという。
そして、期限が来て、部下から結果を報告されたら安藤広大「できなかったことを指摘する」のが肝心だ。何ができていないかを認識させることがリーダーの役割だからだ。
このときに「一生懸命さが足りなかった」といった曖昧なことを指摘するのではなく、「客観的事実」を元にしなければならない、と安藤氏は語る。
「来週は40件を訪問するようにします」
「了解です。来週は、40件を訪問して5件の契約を取るのが目標ですね」
と、不足を認識させて、その不足を埋めるために何を改善するのかを同時に提案させ、次の目標を設定します。未達だった場合は、目標の1つ手前のプロセスを加えることがポイントです。ここでは、訪問件数が目標として加わりました。(P.221)
また来週報告させ、評価する。そして、達成したら「了解です。お疲れさまです」と受け止める。このときに、「すごいな」などと過剰に褒めすぎないのがポイントになる、とのことだ。
もちろん、大きな成果を出していたら、大きな評価をしてもいい。大事なのは「あたりまえ」の基準をブレさせないことだと、安藤氏は説明する。
新人リーダーに知ってほしい管理術
この方法であれば、部下を過剰に褒めたり、途中経過を気にしたりしなくていいので、リーダーはリーダーの仕事に専念できそうだ。
もし、部下の評価方法に悩んでいるリーダーがいたら、ぜひ試してみてほしい。
本書は他にも、リーダーが取るべき言動や、リーダーになったら最初にすべきこと、部下との関わり方などについてわかりやすく紹介されている。
筆者はこの本を読み終わった後、「リーダーをしていた頃に、この本があったらなあ」としみじみ感じたものだ。
「どうにも部下との距離感がうまくはかれない」「リーダーになったものの何からしていいかわからない」という方は、ぜひ手に取ってほしい。
きっと、あなたの悩みを解決する手段が載っているはずだから。