医療本を見極める3つのポイント
最後に、医療に関する本を見極めるためのポイントを3つお伝えしましょう。
1つは、「標準治療が現時点で科学的に最良な治療であると知る」ことです。標準治療以外の治療法を強く推奨するような本は、読むなとは言いませんが、内容を信じ込んで標準治療を受ける機会を失するようなら、やめておいたほうがいい。
2つ目は、「専門家の言葉でも『個人の意見』には注意すること」です。その意見に出典はあるのか。専門家の著書であっても、私見をまとめたものであれば、信頼性は低いかもしれません。
3つ目は、「あえて後ろから目を通してみること」です。そうした本には巻末に自分の施術やクリニックへと誘導するようなメッセージが書かれていることがある。宣伝ありきの本かどうかを確認するのも、本を選ぶ際の重要なポイントです。
私たちは本に限らず、見たいものを見て、信じたいものを信じる傾向にあります。自分の背中を押してくれる情報を、自然と探してしまうという弱さがあるのです。
「こうなったらいいな」と願望を抱いている時点で中立的な情報収集はできないと自覚する必要があるでしょう。
科学は、時として自分に不都合だったり、不快だったり、信じたくないものだったりします。でも中立的な目で見れば、それは正しい事実であり、最も自分の命を守ってくれる情報だったりすることがよくあります。
「本当によい本には、わかりやすい答えは書いていない。そこにあるのはむしろ新しい問いだ」とNHK「フェイク・バスターズ」で共演した評論家の宇野常寛さんがおっしゃっていました。
医療健康本を選ぶ際にも、このことをぜひ念頭に置いておいていただきたいと思います。
【参考文献】
(1) Ubersuggerstで調査
(2) JMIR Cancer. 17;4(2):e10031, 2018
(3) https://developers.google.com/search/blog/2017/12/for-more-reliable-health-search?hl=ja
(4) https://www.asahi.com/corporate/info/12878786
(5)『がん補完代替医療ガイドライン』日本緩和医療学会
(6) JNCI J Natl Cancer Inst 110(1): djx145, 2018
(7) JAMA Oncol.4(10):1375-1381, 2018
(※本原稿は、2022年8月20日、21日に開催されたオンライン配信を元に記事化したものです)