今、「学校に行かない子どもたち」が、とても増えています。小・中学校の長期欠席者は41万人(うち不登校が24万5000人・令和3年度)にのぼり、過去最高を更新しています。本連載では、20年にわたり、学校の外から教育支援を続け、コロナ禍以降はメタバースを活用した不登校支援も注目される認定NPO法人「カタリバ」の代表理事、今村久美氏の初著書「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から、不登校を理解し、子どもたちに伴走するためのヒントを、ピックアップしてご紹介していきます。「不登校」という事象について考えるときに、本人へのケアという個人に着目した視点と、教育環境との相性や教育制度など、個人を苦しめている社会の側に視点をおいた考え方など、幾つかの視点があります。ここでは個人に着目した考え方の一つを本書から紹介します。
エネルギーが徐々に回復してきたら
前回、不登校の子への、休み始めから休養前期までの関わり方を説明いたしました。今回は、休養後期から復帰期について説明したいと思います。
・休養後期
エネルギーはまだ低いものの、家の中で落ち着いてきたり、家族と出かけることができたりするようになる時期です。趣味や遊びに興味がわいたり、運動や家事などができるようになる子もいるでしょう。
この時期になってきたら、子どもと相談しながら無理のない範囲で、小さな目標やステップを設定するのもいいと思います。たとえば、「リビングで過ごしてみる」「一緒に買い物に行く」「家族で食事をする」など、小さなことから少しずつ進めましょう。
本書の第5章で詳しく解説している、近くの「教育支援センター」やフリースクールなどの「居場所」について話をしたり、興味を持ったら見学に誘ったりすることもできるかもしれません。その場合、事前に保護者が見学し、施設や活動の様子に加えてスタッフの様子などを確認しておくほうがいいと思います。
・回復期
この頃になると、少しずつ子どもの心のエネルギーが溜まってきて、「家にいるのも退屈」「なんだか暇……」と言い始めたりします。また、友達と遊ぶことができるようになったり、学習に興味を持ったり、「将来どうしようかな、進学できるかな」と考え始める子どももいます。
訪問面談に顔を出せるようになったり、教育支援センターやフリースクールなどへ通えるようになる子もいるでしょう。“教育支援センター”と言っても子どもは理解しづらいと思うので、「勉強をサポートしてくれるスペースがあるらしいよ。一緒に行ってみる?」など、子どもが抵抗感を持ちにくい説明をしてみてください。
この時期に大切なのは「回復してきた! 遅れを取り戻さないと!」と親が焦りすぎず、本人の決断やペースを尊重しながら、子ども本人に自己決定させていくことです。学校への登校や、教育支援センター、フリースクールなど、様々な居場所の利用を考えていく場合も、タイミングや方法、頻度は本人と話をして決めましょう。
子どもによっては、親の期待に応えようと無理をして、また心のエネルギーが減ってしまうこともあります。子どもの状態は、行きつ戻りつを繰り返します。あまり一喜一憂しすぎず、長い目で子どもを信じてみてほしいと思います。
・復帰期
この頃になると、生活リズムが整い、相談室や保健室などを利用した登校や、教育支援センターなどの利用が定期的にできるようになってきます。友達と遊んだり学習を進めたりすることもできるでしょう。
学校や利用機関と連携しながら、無理をしていないかどうかは定期的に確認してください。たとえば、腹痛や頭痛、吐き気などの心身症状がないか、勉強に主体的に取り組めているか、つまずきがないか、などです。
「別室登校はできているけれど、集団教室へ戻らなくて大丈夫かな」と不安になる場合もあるかもしれませんが、子どもが自分に合った環境で学びを続けていられれば、問題はありません。ここまで復帰しただけでも、子どもも保護者もかなり頑張っているはずです。子どもにも、ご自身にも、それを認めていただきたいと思います。
以上のような流れをたどって、子どもは心のエネルギーを回復していきます。落ち着いて伴走していきましょう。
*本記事は、「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から抜粋・編集したものです。