翌日、B部長はAを応接室へ呼んだ。

「先週は済まなかったな。再雇用をしない件は撤回するから、定年後もよろしく頼むよ」

 Aはホッとした表情を浮かべた。

「分かりました。それでは再雇用後も管理課勤務でOKですよね?」
「いや、君には商品管理センターの主任として働いてもらいたい。急遽1人退職することになったので後任が必要なんだ。君が仕事に就くまで、そのポストは空けておくよ」

 B部長は、再雇用契約の場合は、勤務先が定年前の職場とは限らないこと、過去10年間で定年退職し再雇用したのは2名で、同じ職場で引き続き働いていたのは、たまたま職場が人手不足だったからだと説明した。

「でも、管理課勤務とセンターの主任じゃ、給料の額が違いますよね。そう考えると納得できません」
「嘱託社員の場合、管理課に残っても課長じゃなくなるから、センターの主任と給料は同じだよ。A君の場合は、今までの年収からすると30%カットだね。でも今までより仕事はうんとラクになるからいいんじゃない?」

 Aは再雇用後も課長職を継続し、給料も変わらないと思っていたので、B部長の言葉に強いショックを受けた。

「そんなバカな!給料が減ったら住宅ローンや子どもの学費の支払いはどうなるんだ?」

 ボヤキが止まらないAであった。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。