相続財産の寄付で相続税が非課税になる
「福島国際研究教育機構」とは?
相続税の申告期限までに相続や遺贈により取得した財産を公益法人などに寄付すると、寄付した財産額は相続税が非課税となる特例がある。この対象となる公益法人に「福島国際研究教育機構(Fukushima Institute for Research, Education and Innovation、略称F-REI=エフレイ)」が加わることになりそうだ。
「令和5年度税制改正要望」を見ると、復興庁・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・環境省と、実に6省庁もが「福島国際研究教育機構への寄附に係る税制措置」を要望している。政府・官庁そろってこれほどまでに寄付を集めたがっている「福島国際研究教育機構」とは、何なのだろう?
11年3月11日、東日本大震災と原発事故という前代未聞の被害を受けた福島浜通り地域。帰還困難区域を除く全地域で避難指示が解除され、復興は徐々に進んでいる。とはいえ、避難等の影響による人口減少、産業の衰退、原発災害による未利用・未活用の広大な土地など、多くの課題が残されている。
この課題を解決し、「創造的復興」の理念に基づき、イノベーション等を通じたSDGsな新しい地域社会モデルを実現する拠点として期待されているのが、「福島国際研究教育機構」だ。創造的復興だの、イノベーションだの、SDGsだの、抽象的で理解困難だが、要は世界に誇れる最先端の研究開発施設とのことだ。
どういった機能を備えるかは、復興庁作成の「福島国際研究教育機構基本構想」によると以下の通り。
〈1〉ロボット、〈2〉農林水産業、〈3〉エネルギー、〈4〉放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用、〈5〉原子力災害に関するデータや知見の集積・発信
(2)産業化機能
●機構発ベンチャー企業への出資等を通じ、産学連携体制を構築。
●最先端の設備や実証フィールドの活用、大胆な規制緩和等により、国内外関係者の参画を推進。
●戦略的な知的財産マネジメント等により、研究者のインセンティブを確保。
(3)人材育成機能
●連携大学院制度を活用。IAEA(国際原子力機関)等と連携し、廃炉現場にも貢献し得る国際研究者を育成。
●高等専門学校との連携。小中高校生等が先端的な研究に触れる多様な機会を創出。
●企業人材・社会人向けの専門教育やリカレント教育を通じ、産業化に向けた専門人材を育成。
(4)司令塔機能
●協議会を組織し、既存施設等の取組に横串を刺す司令塔としての機能を最大限発揮。
●研究の加速や総合調整を図る観点から、JAEA(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)・QST(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構)・NIES(国立研究開発法人国立環境研究所)の放射性物質の環境動態研究に係る部分を機構に順次統合。福島ロボットテストフィールドの機構への統合に関して福島県と協議。農林水産業、エネルギー等の分野の関連予算を機構に集約。
22年9月、福島浜通り地域の浪江町に整備地が決定し、23年4月に設立予定だ。しかし、一部には、防衛費増税と並行する「軍学共同」との声も上がっている。その点についても、今後の行方を注視したい。