事件の実行役は
寄せ集めの素人集団

 特殊詐欺事件では、日本の警察が「60億円超」と特定したように、もはや4人に逃れる余地はなさそうだ。それでは、強盗事件はどうか。こちらについては、実は全容がはっきりしていない。

 警察庁は現時点で14都府県、計20件を把握し、三十数人を逮捕したとしているが「少なくとも」としている。もっと多い可能性が濃厚だ。

 実行役はインターネットの「闇バイト」に応募して集められたが、しょせんは寄せ集めのド素人集団。急ごしらえのグループで、一緒に強盗事件を起こしたが、お互いの素性すら知らないのだ。ここに、捜査の難しさが出てくる。組織犯罪は容疑者の役割や指示系統を解き明かしていく必要があるものの、これができない。

 実行役が容疑そのものは認めても、背後関係についてまったく知らないのだ。警察としても、これでは追及のしようがない。

 一連の事件は、昨年秋ごろから今年初めにかけて発生。はっきり表面化したのは1月19日、東京都狛江市で大塩衣与さん(90)が殺害された事件だ。千葉県大網白里市の男性が襲われた事件で、強盗致傷容疑で逮捕された男が持っていたスマホに、大塩さん襲撃に関するメッセージが残っていたことから発覚した。

 千葉県警からの連絡で警視庁の捜査員が訪問したところ、大塩さんが変わり果てた姿で発見されたのは、既に報道されているとおりだ。前述のデスクは「ここまでするか?ってぐらい、顔の損傷は激しかったようです」と話す。

 フィリピンの収容所で悠々自適の生活を送っていた4人と違い、実行犯らは正常な感覚がまひしていたのだろう。「忍び込んで盗む」ではなく「在宅時に押し入って金のありかを聞き出す」ため、過剰な暴行を加えた可能性がうかがえる。

 ただ、犯行の多くは未明から早朝にかけて発生しているが、他では昼だったり夕方だったりと一貫していない。複数の実行役が粘着テープや結束バンドで縛り上げる手口が似ている一方で、大塩さんの事件のように拳で徹底的に殴りつける手口もあれば、ハンマーや刃物といった凶器を使った事件もあり、実行犯が入れ替わっていた可能性が濃厚だ。