職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。
意味のある声がけ、意味のない声がけ
職場では、お互いの声がけが必要だと言われます。
あなたは、日ごろ、どんな声がけをしているでしょうか?
職業柄、離職率に悩む企業から相談を受けることがあります。
新人には研修を充実させて、その後、1人ずつ教育担当もつけて、こまめに声がけもしながら育てているのに、やっと一人前になったところで退職願が出ることがあるそうです。
おそらく、声がけも「すればいい」というものではなく、絶妙な気づかいが必要なのでしょう。
新人時代、あなたはどんな声がけがあったら嬉しかったでしょうか。
すぐ思いつくのは、次のような声がけでしょう。
ダメな声がけ例:
「大丈夫?」
「あの仕事、大丈夫だよね?」
ただ、本当に業務が進んでいるかを確認したいときには、意味のない声がけです。
なぜなら、人は「大丈夫」を演じたいからです。
「いいえ、大丈夫じゃありません」を言うのには勇気がいります。
人は、できない人間と思われたくないし、教えてもらったのに「大丈夫」ではなかったら申し訳ないと思うものです。
「大丈夫?」という声がけには、「大丈夫に決まっているよね!」というプレッシャーが含まれているのです。
「一歩だけ踏み込む」
そんな声がけをしよう
声がけするときの気づかいは、「大丈夫?」以外の質問のバリエーションを持つことです。
「はい・いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンより、相手に話してもらうオープンクエスチョンで声がけをしてみましょう。
たとえば、次のような声がけです。
いい声がけ例:
「どこまで進んだ?」
「いま、どんなことやってるの?」
こうやって一歩だけ踏み込んでみると、「いや、じつは困っていることがあって……」と、相談が出てくることがあります。そこまでやって、ようやく「声をかけてもらって嬉しかった」という思いが出てくるのです。
とはいえ、ぐいぐいと詰めるのではなく、あくまで一歩です。それがちょうどいい気づかいの距離です。
さらに「声がけのうまい人」はどうする?
会社員時代の仲間に、声がけの仕方が上手な人がいました。
彼女が後輩にしていた声がけが、
「今日の帰りまでに、何か質問を3つ用意してください」
というものでした。
そうすると、特に新人の頃は、聞くべきことを念頭に置いて業務をこなすことができます。
ぜひ、「大丈夫?」という意味のない声がけをやめて、限定した声がけをするようにしてみてください。