職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。
電話は「ここぞ」のときの手段
「電話は時間泥棒だ」という考え方が一般的になりつつあります。
電話が悪者のように捉えられ、その存在は、他の通信手段の後ろに追いやられている感があります。
そういう私も、コミュニケーションツールはSNS中心で、プライベートで電話をすることは、ほぼありません。
ただ、だからこそ、使う機会が減った電話が「最適な場面もある」ということも感じます。
たとえば、テレワーク中のメンバーの様子が気になったときなどです。
何かあったか聞きたいと思ったら、無難にチャットやメールを選ぶ人が多いかもしれません。
ただ、急ぎの業務についてなら何も考えずに文字が打てるのに、ちょっとしたことの確認だと、言葉を選ぶのに時間がかかるのではないでしょうか。
それに、相手からの返信も文字情報ですから、微妙な変化をうかがい知ることまでは困難です。
そうかといって、定期的な1on1ミーティングなどもあるでしょうし、わざわざ面談を提案してしまうと、何ごとかと相手が身構えてしまいます。
まさに、自分の心の壁を越えないといけない瞬間ですね。
電話は「カメラオフのツール」でもある
こういうときは、声だけのコミュニケーションツールである電話を使うのがおすすめです。
ただし、電話をかける際は必ず相手への「予告」が必要です。
チャットやメールで、
「少し電話で話したいんだけれど、15時ごろどう?」
と、一言伝えてください。
心の準備を相手にさせてあげる、大切な気づかいです。
それでも若い人にとっては、電話はハードルが高いかもしれません。
でも、こう考えることはできないでしょうか。
いまやオンライン会議が当たり前のようになりました。そうすると、むしろ電話は「カメラオフで顔が見えないオンライン会議」と同じです。
このように伝えると、はるかに心の負担が軽く感じられるでしょう。
もし、部下や同僚が一人暮らしなら、1日のうちで会話することが「コンビニでのやりとりだけ」という状況もあるかもしれません。
そこまで考えることができると、予告して電話することも気づかいの1つだとわかるはずです。
川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。