中国との向き合い方で
考えるべき4つの問題

書影『日本有事』(集英社インターナショナル新書)『日本有事』(集英社インターナショナル新書)
清水克彦 著

 こうした中、アメリカのCIA(中央情報局)のバーンズ長官が、2月2日、ワシントンDCにあるジョージタウン大学での講演で、習近平総書記が軍に対し2027年までに台湾侵攻の準備を整えるよう指示したとの情報を得ていると明らかにした。

 アメリカでは、空軍のマイク・ミニハン大将が「2025年に台湾有事でアメリカと中国が戦う」と記した内部文書が明らかになったばかりだが、バーンズ長官が指摘した2027年は中国軍が建軍100周年を迎える年で、習近平総書記の4選がかかる共産党大会が開かれる年に当たる。それだけに説得力がある。

 だとすれば、岸田政権は言うに及ばず、私たち個々の国民も、この先3年から4年の間に「中国とどう向き合うか」の覚悟を持ち、意識の転換を図る必要が生じる。

 具体的に考えるべきは下記の4点だろう。

(1)もしものとき、アメリカは中国をデカップリング(分断)できる底力がある。日本は中国と距離も近くサプライチェーンも強固。そんな中国と関係を悪化させられるのか。

(2)防衛費増額で議論されている反撃能力。中国を想定した場合、どういう能力が必要で、その能力をどのタイミングで使うべきか、そしてその結果、何が生じそうか。

(3)いまだに国会では、政府に対し「日本は戦争にかじを切ろうとしているのか?」的な追及が散見されるが、尖閣諸島をはじめ先島諸島が攻撃された場合の備えはあるのか。

(4)日米安全保障条約は、「アメリカが日本を守る条約」と解釈されがちだが、相互の防衛義務がうたわれた条約。日本が独自で自国を守る力を持つことは当然で、それだけでなく、アメリカ軍を守る局面も出てくることをどう考えるか。

「気球」問題で米中関係は当面冷えたまま。秦剛外相に見る「戦狼外交」で日中関係もきな臭さが漂う。

 数年内に有事が起きることを想定しながら、私たちも、中国との向き合い方、そしてアメリカとの付き合い方も真剣に考える時期が来ている。

(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師 清水克彦)