江蘇省はこれから、
何らかの政策の中心地になる?

 となると、なぜ習近平は江蘇省だったのか?という冒頭の疑問に戻る。

 南京市を中心とする江蘇省は、貿易都市・上海とIT産業都市・杭州を擁する浙江省に隣接し、長江デルタの下流に位置している。歴史的に見ても経済活動が活発な地域で、省GDPも「貿易大省」と呼ばれる広東省に次いで2位の地位を維持し続けている。

 そんな江蘇省が今後何らかの政策を推進する中心になるのか。それとも政府には別の思惑があるのか。まだ具体的な答えは見つからないが、注目しておく必要はありそうだ。

 それにしても、今回答えを探し求めてさまざまな資料を読んでいたときに目にした記事に驚いた。台湾のコラムニスト張競氏が、1月にばらばらと各地で行われた人民代表選挙は「法的に見ても違憲である」と主張していたからだ。その指摘に従って、中国政府のサイトで中国憲法を確認すると、確かに第60条に「全国人民代表はその任期が切れる2カ月前までに代表選挙を行うこと」とある。

 今年3月初旬の全体会議には新たに選出された人民代表が出席することになっているため、前任者の任期は長くてもその直前までのはず。となると、1月に行われた人民代表選挙は「任期が切れる2カ月前まで」を過ぎており、確かに選挙自体が無効となる。そういえば、香港では昨年12月中旬に人民代表選挙が行われていた。

 ……ということは、例年「元日から春節の間」に各地で行われてきた人民代表選挙はすべて無効ではないか。つまり、長年の全国人民代表会議はすべて違憲だったということになる。こんなポカが本当にあるんだと驚くばかりだが、政府はこのままずっと気付かないフリをしていくのだろうなぁ。