SNSでつぶやかれる
婦人科検診での不快感・痛み

 また、今回の騒動に関する女性たちの声から感じたのは、婦人科医療を受ける際の精神的・身体的不安の大きさである。

 内診台はすでに述べた通り、心理的な負担の大きい医療器具である。開発された当初は「足を自分で開くことに抵抗がある女性のため」という意図があったのかもしれないが、むしろ「自動的に足を開かされる」ことの方に不安を抱く人も当然いる。

 また、SNS上で指摘している人がいたが、アダルトビデオのテーマとして内診台が使用されることがあり、こういったビデオには「屈辱」「羞恥」といった言葉がタイトルやあおり文で使われている。無防備な状態にならざるを得ない医療行為を性的好奇心と結び付けて販売する行為であるのだから、「セックスマシーン」とふざけたYouTuberよりもさらにタチが悪い。

 実際に医療従事者による盗撮行為やわいせつ行為も何度も報道されている。最近では、人気YouTuberの女性が産婦人科でのセクハラ被害を告白したり(参考:「めっちゃ下見てくる」人気女性YouTuber、産婦人科でのセクハラ被害告白「本当に気持ち悪い」/J-castニュース 2月16日 )、診察中に医療行為を装ってわいせつな行為に及んだ疑惑があるとして70代の男性院長が逮捕される事件も報道されている(参考:診察中に女性患者の胸を触ったか クリニック院長を再逮捕/沖縄テレビ放送 2月14日)。

 婦人科検診での不安は他にもある。

 子宮頸がん検診での器具を性器内に入れる検査は痛いし、胸をすりつぶすようにしてX線画像を撮らなければならないマンモグラフィーは恐怖そのものである。もちろん、検診に多少の痛みや不快感があるのは仕方ないかもしれないが、血液を抜いたり、バリウムによる検診よりも、婦人科の定期検診の方が負担が大きいと感じる女性も少なくないはずだ。

 検診率を上げるためにも検診の負担を軽減することは必要だろう。

 日本では中絶薬がまだ認可されておらず、緊急避妊薬(アフターピル)も諸外国より手に入りづらく高価で売られている。既得権益を持つ医療業界の反発が大きく、女性側に負担を強いる状況が続いているのは、医療界が「男社会」だからではないのかという指摘がSNSを中心に近年強まっている。無痛分娩も、日本では一般的ではない。

 こういった状況から考えるに、産科・婦人科での痛みや不快感、羞恥の軽減について、女性側から声は今後強まっていくだろう。もちろん心ある医療従事者の中には、この状況の改善が必要だと考える人も多いはずだ。