コロナ前後で変わった
鉄道会社の「経営の形」
コロナ禍からちょうど3年が経過した今、これからの鉄道事業者のあり方を占うために、近鉄GHD、阪急・阪神HD、東武、東急の四半期経常損益の推移を見てみたい。
各社ともその都度、固定資産売却益や減損損失などの特別損益が発生しているが、営業利益だけを見れば2020年度当初の巨額赤字から始まり、徐々に改善してきたことが分かる。
続いて営業損益を運輸、不動産、レジャー・ホテル等、その他の4セグメントに分けて推移を見ていこう。
各社ともコロナ禍当初は運輸、レジャーセグメントで大きな営業赤字となったが、まずは運輸、遅れてレジャーの赤字が概ね一定のペースで改善した。今年度に入って各社ともほとんどの事業が黒字となっている。
興味深いのは各社の事業構成の変化だ。2019年度第3四半期のセグメント別営業損益を見れば分かるように従来、鉄道事業者の利益のほとんどは強いシナジー効果を持つ運輸と不動産で稼いでいた。
コロナ禍以降は不動産セグメントは依然好調なものの、運輸セグメントの利益率が大きく下がり、それ以外のセグメントが増益した。またレジャーセグメントは元々、利益には寄与していなかったが、コロナ以降、巨額の赤字を生み出すこととなり、資産を所有せず運営に特化する「アセットライト経営」の導入が進んだ。
ここまで見てきたように、新たな収益源の模索、コスト削減、国民のコロナ観の変化が相まって、コロナ前とは異なる形の経営が作られつつあると言えるだろう。