職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。
会議は「準備」が9割
会議の進行をする上でも「予告」が参加者と自分のストレス軽減になります。
私がファシリテーションの上手な上司から学んだのは「会議は準備が9割」ということです。
ホワイトボードに意見を書き出しながら課題を浮き彫りにし、参加者の納得を得ながら収束する。終了時刻には次回話し合うことまでまとめられている。
そんな姿を見て、いつもこうなりたいと思っていました。
「会議のテーマと目的を把握しておく」
「あらかじめ参加者にはアジェンダを送っておく」
「意見を用意して臨むよう伝える」
など、テクニックはいくつかあります。
その中でも簡単で意外だったのが、「参加者リストを確認しておく」ことでした。その上で、「発言のトップバッターとなる人を決めておく」のだそうです。
なぜなら、最初の人の発言が、その後の会議の方向性に影響することが多いからです。
最初にネガティブな意見からスタートすると、そのあとに続く人も、厳しい意見に引っ張られてしまいます。
もちろん、会議ではポジティブな意見だけが望ましいわけではありません。
ただ、全員に自由な発言をしてもらいたいからこそ、影響を与えやすい強い発言をしそうな人を最初に持ってこない、という気づかいです。
「アイデア」はいきなり出てこない
自分の心の壁を乗り越えるために参加者リストを見て、不穏な会議の救世主となってくれる「フラットな発言をしてくれそうな人」をチェックしておきましょう。
そして、前もって自分が当日の進行役だと予告し、「あとで話を振るからね」と参加者に伝えておくことがおすすめです。
そうすることで、メンバーは各々、意見を用意して参加してくれます。
会議の種類にもよりますが、その場でいいアイデアが出ることは、日本の会議の場ではあまり見かけません。
やはり、各々が事前に考えたことを持ち寄って臨むからこそ、質の高い生産的な内容になるのです。
そのためにも、事前の準備が大事です。
一方で、ネガティブな発言が出たときに、自分からあえてポジティブな発言をしたり、自分への同意だけを積極的に拾ったりするような進行役の人もいます。
これは、周りに壁を作るような行為です。
進行役の役割は、あくまでみんなに意見を出してもらい、それを収束していくことです。大勢の人がいるときにも、ちょっとした気づかいを出せるようにしましょう。
川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。