職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。
正論よりも大事なこと
あなたは、アドバイス好きな先輩に困ったことがないでしょうか?
私は何度もあります。
もちろん、適度かつ的確なアドバイスはありがたいものです。
ただ、「○○するべき」「絶対に○○だ」という話が延々と続くと、次第にありがたみが薄れていきます。
最終的にそのアドバイスをどう活用するかは、アドバイスを受けた本人が決めることです。正論を伝え続けるよりも、考え方の共有くらいまでがちょうどいいということが、アドバイスを受ける立場になるとわかるはずです。
感謝を伝えつつ、お互いを尊重するイメージです。
アドバイス好きな人は悪気のない、いわゆる「おせっかい」さんです。
しかしやりすぎは、相手の心の壁を越えることになってしまいます。「引き際」が大切なのです。
「教えてくれたこと」に感謝する
もし、おせっかいな先輩が現れたときは、感謝にプラスして「自分で考えたい」と伝えてください。
「ありがとうございます。自分では気づけなかったことを教えていただきました。
ここから先は、私の成長のためにも自分で考えてみます」
アドバイスの切りのいいところで、こんなふうに伝えれば、相手の「あなたのためを思って」という気持ちは満たされ、お互いが気分よく解放されると思います。
こうした経験は、自分がアドバイスをする立場になったときにも参考になります。
アドバイスの内容はいったん横に置き、それを教えてくれたことに感謝するのが気づかいなのです。
メールでの助言に対しても、次のように返すようにしましょう。
いいメール
ご助言のメールをありがとうございます。
読み返しながら、自分では気づけなかったことばかりと感じました。
こんなに考えていただいたことに、心から感謝しています。
〇〇さんからのアドバイスを参考に自分の行動を振り返り、成長につなげてまいります。
また何かありましたら、相談させてください。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
ここでも、教えてくれた内容にすべて触れる必要はありません。
「送ってくれた」「教えてくれた」という事実に対して、感謝を伝えるようなスタンスで十分です。
正直ピンときていないのに、あまりにいい反応をしてしまうと、また同じような長文メールが来てしまうかもしれません。
そうならない一定の距離感は保つ、ちょうどいいメールを返せるようになりましょう。
川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。