職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。

「仕事ができる人」が部下をやる気にさせる“絶妙なフィードバック”とは?Photo: Adobe Stock

「フィードバックの質」が「仕事の質」

 あなたが後輩や同僚に「アドバイス」をするとき、どのように話していますか?

 後輩が増えてくると、報告をする側から報告を受ける側に役割も変わってきます。

 日報や週報といった定期的なもの以外にも、完了報告や顛末書など、目を通さなければいけないものも増えてきます。

 いずれも報告と上司からのフィードバックはセットが原則ですから、報告するほうにもされるほうにも、気づかいが必要です

 そもそも「フィード(Feed)」は「食べさせる」という意味です。

 さらに相手に「バック(Back)」するということは、フィードバックには「相手の栄養となることを返し、仕事をよりよくする」という目的があります。

 あなたは、フィードバックをしようと思っていたのに、時が流れて、そのうち「ま、いっか」でやらなかったという経験をしたことはありますか。

「フィードバックしない」は、「あなたに関心ないよ」というメッセージにも聞こえます。「自分がされて嬉しいかどうか」で考えると、嫌ですよね。

「答え」ではなく「方法」を伝える

 私は報告書の「書き方指導」をする際、実物を見せていただくのですが、そこで見つけた法則があります。

 報告書の中身の薄さと上司のフィードバックの薄さはリンクしているということです

 報告書は読み手がいるから書く意欲が湧くもので、逆もまた真なりです。

 一方で、丁寧なフィードバックに努める人は、ねぎらいや「良かった点」なども忘れません。ただ、あれこれと言いたいことを詰め込みすぎるきらいがあります。

 失敗させないために教えたくなる気持ちはわかりますが、実際にやってみないとピンと来ないこともあります。

 相手に失礼になることや大きなトラブルにつながってしまうようなところなど、「これだけは欠かせない!」というポイントを指摘するだけにしておきましょう。報告より長いフィードバックは、相手にプレッシャーを与え、読むだけでも負担になります。

 あなただったら、提出した報告書に、どんなフィードバックがあったら嬉しいでしょうか。

 次のように、「ねぎらい」「短く」「方法を伝える」の3点セットが有効です

いいフィードバック
 〇〇社への訪問、お疲れさまでした。次回データを持っていくと書いてありましたが、商品企画部の鈴木さんが最新のものを持っています。相談してみてください。

 答えを用意して渡すのではなく、答えを獲得する方法を情報共有するイメージです

 こうすることで、相手の仕事の質に栄養を与えることができます。

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。