職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。

上司から言われて「嬉しかった言葉」と「つらかった余計な一言」とは?Photo: Adobe Stock

「さりげない一言」で十分

「今日は午後に大事なプレゼンがある。朝からそわそわして緊張する……」

 そんな大事な日が、誰しもあると思います。
 同僚や上司・部下の関係であれば、「あの人は今日、大事な日だ」ということを認識しているはずです。

 そんなとき、どう声をかけていいか、そっとしておいたほうがいいのか、「気づいているだけの人」は迷うのではないでしょうか?

 私は、リクルートで働き始めた頃、お客さまへの対応に困ると、いつもある先輩に相談していました。するとその方は、私がお叱りをくださったお客さまに連絡をしなくてはいけない日のことを覚えていて、その日の朝、「今日だったね」と、声をかけてくれていました

 この気づかいは、とても心強かったのを覚えています。
 それ以降、私も、それが嬉しかったことを覚えていたので、逆の立場になったときに、「今日だったね」と声をかけるようになっていました。
 さりげない一言でも十分に気づかいになるのだなと思い知った例の1つでした。

「余計なこと」は言わない

 この例のように、気づいたときに声をかけたいと思っていても、躊躇してしまうことがあると思います。
 それは、気の利いたことを言わないといけないと思い込んでいるからではないでしょうか。「相手のため」と思って声がけをやりすぎる人は、自分の経験談を丁寧に話し込んでしまいがちです。

 相手が新人であれば、こういう指導もありでしょうが、2年目以降の同僚となると、自分で考える力も養われているはずです。
 すると、教えすぎたり、話し込んだりしてしまうのはマイナスです。
 やはり、「今日だったね」くらいに留めて、あとはそっと見守るようなスタンスでちょうどいいでしょう

さらに極端な例を挙げると、

「絶対に失敗するなよ」
「失敗したら帰ってこなくていいぞ」

 と余計なプレッシャーを与える上司もいます。こうした圧力を力に変えるような人も、たしかに一定数います。

 しかし、今のご時世では、プレッシャーに潰れてしまう可能性があるのであれば、控えるべきことでしょう
 解決策のポイントを手短に共有したら、あとは本人に考えさせる。そして、大事な日の朝一番で声をかける。
「ここぞ」という日のちょっとした一言は、それだけで大きな勇気づけになります。

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。