開成・麻布・灘・筑波大駒場・渋谷幕張…。東京・吉祥寺の進学塾VAMOSは、「入塾テストなし・先着順」で生徒を選抜しないのに有名難関校に続々合格させると話題の塾だ。男女別カリキュラムを取り入れたロジカルで科学的な学習法は、保護者から圧倒的な支持を集めている。本連載では、VAMOSの学習メソッドが凝縮されたロングセラー『男の子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)から、子どもの計画・理解・反復・習慣のプロセスを体系化した「男の子の特性」に基づく学習法をお伝えしていく。
自分の頭で決めさせて、あえて後悔させる
考えるという作業において、最も重要なプロセスは「決断」です。
ビジネスでも、考えて考えて「もうこれしかない」というものが見えていても、最後に決断ができなければ、それまで考えていた意味はありません。
ところが、集団の意思を重視する日本社会では、大人であっても決断はなかなか大変。子どもであれば、なおさら大変です。
しかし、だからといって、その大事な仕事を子どもから奪い取ってはいけません。
中学入試で問題を解いている最中はもちろんのこと、子どもたちの将来においても意思決定のスピードを上げていくことは非常に重要です。
そして、そうした力は、経験を積んでいかない限り身につきません。
たとえば、迷路で遊んでいる子どもに対し、「そっちじゃないよ」と言ってしまったらどうなるでしょうか。子どもは、道を選ぶ決断の機会を持てません。
たとえ、間違った道であっても、子どもがその道を行くという決断をしたなら、見守ることが必要です。
川に落ちて命の危険があるというならともかく、時間がかかったり、子ども自身が疲れ果てるくらいで済むのなら、それは重要な経験となるからです。
とくに、「自分で決めたい」男の子には、意思決定に親があまり関わってはいけません。
しかしながら、現実には関わりすぎる親が多いのです。
ファミレスでも、子どもが「オムライスがいい」と言っているのに、「先週もそれ食べたじゃない。少しは違うのにしなさいよ」「ハンバーグセットのほうが野菜もいろいろついてくるわよ」などと意見している親をよく見かけます。
でも、それは自分で決めさせて、「あ、お母さんの頼んだハンバーグセットのほうが美味しそうだ」と後悔させればいいのです。
一番いけないのは、なんでも親が決めてしまい「ほらね、やっぱりお母さんの言うとおりにするといいでしょう」と念を押すこと。
これによって、子どもの「自分で決める力」はまったく育たなくなります。
「あえて教えない」ことも大切
実は今、排尿のタイミングがつかめずに、どのくらいもつか不安でしょっちゅうトイレに行く子どもが増えています。逆に漏らす子もいます。
これも、母親が「そろそろトイレに行っておきなさい」と細かく指示を与えているからです。いつトイレに行くかは、自分ではなくお母さんが決めてくれるものだと思い込んでいる、笑い話にもならない子どもが増えているのです。
子どもが5人も6人もいるような時代には、母親は忙しくてとてもそんなことを把握していられませんでした。
だから、子どもたちは漏らしてしまい、その恥ずかしい経験から自分でトイレのタイミングをつかんでいきました。
しかし、今は一人の子どもに、大人がたくさんついています。お母さんだけではなく、お父さんもおじいちゃんもおばあちゃんも「そろそろトイレに行きなさい」と言ってくれるので、子どもが自分で決める能力を失ってしまうのも当たり前。
そういう時代だからこそ、親は意識的に子どもに対し「あえて教えない」というテクニックを使うことも必要になってきます。