給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全ーー成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が3月15日に発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。
会社の業績をどうチェックしたらいいか?
前回に説明したように日常生活の中から気になる会社が見つかったら、次は『会社四季報』でその会社を見てみましょう。
会社四季報とは、3800社近くもある全上場企業の最新データがコンパクトにまとめてある情報ハンドブックです。3月、6月、9月、12月の半ばに最新号が発売されます。
以下の図は、1997年6月に発売された会社四季報のPPIHの記事です。PPIHは当時、店名と同じドン・キホーテが社名でした。
会社四季報でチェックしたいのは、最新の業績データと事業内容・近況です。業績は年度ごとの推移を見ましょう。
上図の左端に94.6、95.6……と書いてあるのは、94年6月期、95年6月期ということであり、94年6月期というのは94年6月に決算が終わる1年間のことです。年度の横に「予」とついているのは予想値ということです。
また、営業利益は本業による利益、経常利益は本業を含めた継続的な業務からの利益、利益は税引き後の純利益です。1株益は1株当たりの純利益(純利益を発行済み株数で割った利益)であり、PER(株価収益率)という指標を計算するための大事なデータです。
会社四季報では売上高、営業利益、経常利益、純利益の金額は百万円単位で記載されています。この場合、下2けたを取り除くと億単位になります。たとえば、3840となっているのは38億4000万円ということです。
売上高は1億円未満を、営業利益は0.1億円未満を四捨五入してみると、当時のドン・キーテの売上高と営業利益は、
・売上高 38億円→55億円→99億円→142億円→204億円
・営業利益 2.6億円→3.4億円→4.5億円→7.3億円→10.3億円
と、ものすごい勢いで成長していることがわかります。
会社四季報を「株の最新カタログ」として使い、銘柄を探す
会社四季報の個別株のデータや記事だけを見たいのならば、SBI証券、楽天証券、auカブコム証券、マネックス証券など主な証券会社に口座を作り、サイトにログインすれば、銘柄ごとに検索して無料で閲覧できます。こうした形で会社四季報を利用している投資家はたくさんいます。
しかし、こうした無料閲覧ができるにもかかわらず、会社四季報を定期購読して毎号チェックしている投資家もいます。
それは、会社四季報を「株の最新カタログ」として利用するためです。本だとペラペラめくることができて、全体をざっと見渡すことができるからです。
そうすると、自分が注目している株以外にも、他に良い株がないかどうかを探すことができ便利です。野球やサッカーが好きな人が、わざわざ選手名鑑を買って眺めるような、あるいはファッション好きな人が好きなブランドの最新カタログを眺めるような感じです。
「会社四季報の熱心な読者に株の下手な人はいない」
というのが、筆者がこれまで数多くの投資家を見てきた率直な感想です。
会社四季報を毎号チェックするのはなかなか骨の折れる作業ですが、それを毎回続けるのは、株式投資で上達するための有効な手段の1つでもあります。
毎号が無理でも、年1回くらいこうした作業をするだけでも、ずいぶんといろいろな発見がありますし、投資家としての能力を上げることに役立つと思います。
※会社四季報はとても役立つことが多い資料ですが、編集部独自の判断や予測も含まれており、それが確実に当たるとか投資の成果が上がるという保証はありません。その点を留意しながら、あくまで投資判断の1つの材料として利用するようにしましょう。
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/