地球誕生から何十億年もの間、この星はあまりにも過酷だった。激しく波立つ海、火山の噴火、大気の絶えまない変化。生命はあらゆる困難に直面しながら絶滅と進化を繰り返した。ホモ・サピエンスの拡散に至るまで生命はしぶとく生き続けてきた。「地球の誕生」から「サピエンスの絶滅、生命の絶滅」まで全歴史を一冊に凝縮した『超圧縮 地球生物全史』(王立協会科学図書賞[royal society science book prize 2022]受賞作)は、その奇跡の物語を描き出す。生命38億年の歴史を超圧縮したサイエンス書として、西成活裕氏(東京大学教授)「とんでもないスケールの本が出た! 奇跡と感動の連続で、本当に「読み終わりたくない」と思わせる数少ない本だ。」、ジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』著者)「著者は万華鏡のように変化する生命のあり方をエキサイティングに描きだす。全人類が楽しめる本だ!」など、世界の第一人者からの書評などが相次いでいる。著者ヘンリー・ジーが熊本大学で行った特別講義を連載でお届けする。(翻訳/竹内薫)
ネイチャー誌の面接風景
ネイチャーの読者は、ほとんどが現役の科学者とその学生たちですが、政治家や科学政策を立案する人たちにも読まれています。もちろん、ジャーナリストの多くも、最新の科学的進歩を知りたいからネイチャーを読むわけです。そのために大きなプレスオフィスやニュース部門などがあるわけです。
ネイチャー誌で働くにはどうしたらいいかと訊かれたら、「すべてのネイチャー誌のツイッターアカウントをフォローすればいい」と答えます。正社員を募集している場合もあれば、出産準備のための求人や、ポスドクとポスドクの間にある人に最適な短期間の求人もあります。
面接に来た人たちをいくつかの原稿のある部屋に閉じ込め、30分ほどした後、また戻ってきて、これらの原稿についてどう思うか、ネイチャー誌に掲載すべきかどうか、何ができるか、などと質問します。
受験者が必ず失敗する質問
私が面接官をしたとき、受験者が必ず失敗する質問は次のような内容です。
「あなたの専門分野ではないもので、最近の興味深い科学的進歩について教えてください」。
答えるのが非常に難しいようです。ネイチャーでは、科学全般に対する一般的な好奇心を持った人を求めています。ジャーナリズムの最初のルールは、新聞を読み、起こっていることをすべて知り、世界について一般的な好奇心を持つことです。
ですから、ネイチャーに応募する人にとっても、「世界に対する好奇心」を持つことは非常に重要です。
私の経験では、ネイチャーに入社する前に、ある程度の研究経験があった方が有利だと思います。一般的に、ネイチャーに入社する人はポスドクを経験していることが多いです。私は幸運にも大学院からすぐに入社できましたが、それはずっとむかしの話。
今はもっと競争が激しくなっています。というのも、今は論文に技術的な問題が多いので、ネイチャーに入る前に「ベンチ」で経験を積んでおくと、論文を本当に理解するのに役立つからです。
※本原稿は、2022/9/2に熊本大学国際先端医学研究機構で開催された第19回「SCIENCE and ME」の著者講演を元に、再編集、記事化したものです。
協力:熊本大学国際先端医学研究機構(IRCMS)
「ネイチャー」シニアエディター
元カリフォルニア大学指導教授。一九六二年ロンドン生まれ。ケンブリッジ大学にて博士号取得。専門は古生物学および進化生物学。一九八七年より科学雑誌「ネイチャー」の編集に参加し、現在は生物学シニアエディター。ただし、仕事のスタイルは監督というより参加者の立場に近く、羽毛恐竜や最初期の魚類など多数の古生物学的発見に貢献している。テレビやラジオなどに専門家として登場、BBC World Science Serviceという番組も制作。このたび『超圧縮 地球生物全史』(ダイヤモンド社)を発刊した。本書の原書“A(Very)Short History of Life on Earth”は優れた科学書に贈られる、王立協会科学図書賞(royal society science book prize 2022)を受賞した。
Photo by John Gilbey