3行破綻のメカニズム、共通するのは…

 21年11月末、FRBのパウエル議長は、「物価上昇は一時的」との認識が、「誤っていた」と認めた。そして22年3月、FRBは利上げを開始した。

 金融引き締めの遅れを取り戻すために、一時は3倍速(0.75ポイント)の追加利上げも実施された。世界的に金利は上昇し、金融市場から過剰流動性も吸い上げられた。これが、この度の銀行破綻が起きた遠因である。金利上昇によって過度な期待がしぼむ過程において、高いレバレッジをかけた金融機関の事業継続が困難になるパターンは、過去にも起きていた。

 まず、暗号資産の分野では、金利上昇によって多くの仮想通貨の価値が大幅に下がり、交換所を運営する企業の業況が悪化した。大手暗号資産交換所、FTXトレーディングの経営破綻がその代表例だ。FTXに関しては、顧客資金を流用していた疑いも強まった。それ以降、暗号資産取引に関する企業の倒産が増え始めた。

 暗号資産の業界を取り巻く心理は急速に暗転した。暗号資産を売却する人は増え、取引業者の資金繰りは悪化した。その裏返しとしてシルバーゲート銀行は自主清算に追い込まれ、全米29位のシグネチャー銀行も破綻した。

 一方、ITスタートアップの分野では、GAFAの業績悪化に見られるように競争が激化した。サブスクリプションのビジネスモデルは行き詰まりを見せている。大手企業から新興勢に至るまで、過剰な人員の整理が続き、業績悪化の懸念も急上昇した。そうして経営体力が不安なスタートアップ系企業から資金を引き上げる投資ファンドなどが増えた。

 その結果、全米16位のシリコンバレー銀行は、投資債権の価値急落、預金引き出し急増、貸倒引当金の増加などに直面し、破綻した。

 いずれも共通するのは、リスク管理の甘さだ。米国において、各行と取引のある暗号資産関連やITスタートアップ企業の事業運営体制が悪化し、中小の金融機関の破綻が増える恐れは高まっている。