国税専門官として10年ほど相続税の税務調査に携わり、富裕層の相続対策の実態をつぶさに見てきた『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の著者・小林義崇氏と、30年以上世界の一流金融機関で投資に携わってきた『お金以前』(日経BP)の著者・土屋剛俊氏が、今年2月に発表されて話題となった政府の「税制改正大綱」を踏まえつつ、相続・贈与税対策について専門家の視点から語り合った。その特別対談の模様を4回にわたりお送りする。(構成/堀 容優子 撮影/稲垣純也)

【元国税×金融マンが明かす】<br />借金取りは親の死後3ヵ月経ってからやってくるワケ

相続についてみんな無頓着すぎる

小林義崇(以下、小林) 土屋さんの著書『お金以前』では、相続の話が「おまけ」として触れられているのがとても印象的でした。私は、相続を「お金の基本」として押さえておくべきだと思うのですが、実際のところお金の基礎知識としては、触れられないことが多い。そこで、あえて「おまけ」としてページを割いているところが、読者の方々にとって親切だなあと感じたんです。

土屋剛俊(以下、土屋) 相続は会社員の退職金と並んで、一度に最大のお金を手にするチャンスであると言われています。親が先に亡くなることを前提にすると、世の中の人ほぼすべてが経験することでもあります。自分にもいつか必ず「その時」が訪れると思って、相続についての知識を得ておいたほうがいい。そのわりに相続について無頓着な人が多くてハラハラするんです。

親の借金を引き継ぐことに

【元国税×金融マンが明かす】<br />借金取りは親の死後3ヵ月経ってからやってくるワケ

小林 親が遺すのは、必ずしもプラスの財産とは限りませんからね。借金があった場合、相続があったことを知った日(通常は親が亡くなった日)から3か月以内に相続放棄の手続きをすれば、借金を引き継がなくてすみます。

土屋 そうなんです。「まさかうちの親に限って借金なんかないだろう」となんとなく考えているかもしれませんが、親の財産の状況は意外にわからないもの。ただでさえ、親の生前に相続の話はしづらいという人が多いですから。

仮に借金というマイナスの財産があったとき、「相続放棄もできる」ということだけでも知っていれば、不安が1つ減ります。ただし、小林さんがおっしゃるように相続放棄は期限が定められており、その期間が過ぎてしまうと「単純承認」といって、借金を含めて親の財産を相続することになってしまいます。

借金取りは3か月経ってからやってくる

小林 だからこそ、親御さんが亡くなったときは、すぐに資産状況の確認をすることが大切です。そして相続に関する初歩的な知識があるかないかで、天国にも地獄にもなり得ることを、ぜひ多くの方に知って欲しいと思います。

土屋 実際、借金の取り立ては相続人(亡くなった人)の死後、3か月間は行われないことが多いんです。3か月が過ぎて「もう借金を含めて相続放棄できない」という状況になってから、借金取りはやってきます。

「亡くなったお父さんの財産を相続しましたよね。お父さんの借金は、あなたから返してもらうことになりましたよ」と。このように、3か月以内なら相続放棄ができることを知っているかいないかで、現在の自分の幸せを揺るがす事態から身を守れるのです。

小林 昔と違って今はきょうだいの数が少ないというのもリスク要因になっています。きょうだいが多いと誰か1人くらいは相続について、なにがしかの知識がある人がいたり、相続の手続きを主体的にやる人がいるものですが、1人っ子とか2人きょうだいなどで誰も相続について知識がないとなると、その時点でアウトになってしまいます。

相続放棄のことを誰も知らないまま3か月が過ぎてしまって、泣く泣く親の借金を背負うことになるというケースは、実際に少なくないのです。【次回に続く】

※本稿は、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)と『お金以前』(日経BP)の著者による特別対談です。