売上を減らしたら、利益が1億円アップした会社をご存じだろうか?
「いずみホールディングス」は、食品流通事業とB to Bマネープラットフォーム事業を展開する企業グループ。食品流通事業6社は、水産・畜産・農産商品を全国の飲食店、量販店、卸売市場に販売。また、B to Bマネープラットフォーム事業では「oneplat」というサービスを展開している。同社は近年、経営改革を進め、利益を1億円アップさせた。
その秘密は、ベストセラーとなっている、木下勝寿(北の達人コーポレーション社長)著『売上最小化、利益最大化の法則』と『時間最短化、成果最大化の法則』の掛け算にあったという。
『売上最小化』は「2021年 スタートアップ・ベンチャー業界人が選ぶビジネス書大賞」を受賞、『時間最短化』は、「がっちりマンデー!!」のツイッターで、「ニトリ」似鳥会長と「食べチョク」秋元代表が「2022年に読んだオススメ本3選」に同時選抜された本だ。
今回、その掛け算の秘密をいずみホールディングスの泉卓真代表が初めてメディアに語った。6回目は「どうやって物流費を年間2500万円削減したか」について迫る。(構成・橋本淳司)

トラックPhoto: Adobe Stock

どうしたらトラック配送費2500万円を減らせるか?

 木下社長の著書を活かせた理由の一つに、元々私たちが数字を細かく分析し業務に活かす文化がありました。

――たとえば、どんな例がありますか?

 当社に「トラックの配送費を2000万円減らそうという課題」がありました。

 仮に自社にトラックは10台ある。

 外注でトラック10台を使っているので20台体制で配送しているとします。

 トラック1台の配送件数は1日50店舗。

 これを65店舗にすると外注分を減らせるので2000万円減らすことができます。

 ただ物理的には無理です。

 『売上最小化、利益最大化の法則』を読んだ後なら、「売上を下げる方法」を考えたかもしれません。

 たとえば、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県に配送していたとしたら、東京だけに絞れば配送効率はよくなり、利益は上がるでしょう。

 でも、このときはまだ本を読んでいませんでした。

――それでは別の方法を考えたということですか?

 私なりに配送費を下げる方法を考えました。

 当時の配送現場の責任者は、配送先を全部チェックして効率よく回るルートをつくったり、なるべく左折だけで回れるルートをつくったりしました。

 ですが、まったく効果は出ませんでした。

 そこで私が手伝うことにしました。

 最初に行ったのはドライバーの業務フローを細かく分析することです。

 すると問題は、携帯電話だとわかりました。

――電話の「時間」と「回数」ということでしょうか?

 そうです。

 配送中に、

「まだ来ないのか?」
「今どこを走っているんだとか?」
「この荷物を取りに来てほしい」

 といった電話がかかってきます。

 こうしたやりとりを1日何回やっているのかをドライバーに聞きました。

 すると「10回くらい」と言います。

 さらに「1回の電話時間は1分程度」と言いました。

 それなら、使っている時間は10分です。

 でも、当社には「人は信じるが情報(仕事)は疑う」という文化があります。

 トラックに別の社員を同席させて計測すると、実際の電話回数は20~30回、しかも1回の電話時間は3分程度でした。

 そこで私は考えました。

 1回の電話時間「3分」を1分に削減できると、2分の時短になります。

 それが1日分だと、2分×電話の回数20~30回で、実に40~60分の時短になります。

 60分あれば、1日に15店舗分、配送を増やすことができます。

 1店舗に対する配送は平均2箱で、これを1箱300円で外注していました。

 それが60分という貴重な時間が生まれたことで、15店舗分×2箱×300円=9000円を自社配送に変えることができます。

 働く時間も変わらず、配送効率がよくなり、外注費用が9000円×10台で9万円浮きます。

 この結果、9万円×月営業日23日×12か月で、合計約2500万円浮いたのです。

 私たちは「電話は1分」というルールをつくり、物流費を約2500万円浮かせました。

 これは社内でも一つの成功例として「やればできる」という大きな自信につながっています。

読後に知識を体系化

 ただし、『売上最小化、利益最大化の法則』を読む前は私一人で会社の数字を分析していました。

 発刊後、幹部と『売上最小化』を共有し、目的や課題などを意識しながら著書に触れ、情報や知識に昇華していきました。

 すると、知識が体系化され、著書活用後はより深く、深掘りして考え、実行できるようになってきたのです。

 最近では、さらなる配送費の削減成果が出てきています。みなさん、この後、ピッパで動けるかどうかだけです。やった人だけが先に行きます。ぜひ2冊を読み倒して社内で共有し、実行してみてください。

【9割の人が知らない】年間2500万円のコスト削減に成功した仕組み
【泉卓真氏略歴】
株式会社いずみホールディングス 代表取締役社長。
複数の飲食チェーン店勤務を経て2004年に海産物専門卸のいずみを創業。その後、畜産物卸や農産物卸にも参入し、2012年にいずみホールディングスを設立。2019年、株式会社Oneplatを設立し、代表取締役社長に就任。SBIや三菱UFJ、政府系の官民ファンドなどから総額10億5000万円の投資を集め、銀行をはじめとした金融機関と提携し、日本初のスキームで構築された、BtoBマネープラットフォームを構築。

(本稿では『時間最短化、成果最大化の法則』と『売上最小化、利益最大化の法則』をフル活用し、大きな成果を上げた事例を紹介しています)