全国の農協を束ねるJA全中の会長、副会長を輩出してきた農協界の名門、JA北海道中央会がお家騒動に揺れている。会長と専務が暗闘を繰り広げているのだ。特集『儲かる農業 下剋上 ピンチをチャンスに』の#7では、農協の農家代表の役員の弱体化と、中央会の凋落を象徴する内紛に迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
JA北海道「農家vs学経」内部抗争に見る
農協中央会と連合会の落日
農協では、二つの系統のリーダーがつばぜり合いを繰り広げてきた。第一の系統は、農家代表として地域から選ばれる組合長や会長。第二は職員出身(学識経験者〈学経〉)の幹部だ。
前者はたたき上げ、後者は大学卒業のエリートが多い。農家代表からすれば、学経は職員の利益を代弁する “小役人”であり、学経からすれば農家代表は実務能力が伴わない“政治家”のように映る。
それでも、「農協は農家がつくる農家のための組織」という建前があるので学経は農家代表を表向きは尊重してきた。両者の対立が表沙汰になることはまれだったのだ。
だがここにきて、JA北海道中央会で農家代表の小野寺俊幸会長と学経の柴田倫宏専務の対立が表面化している。日本一の農業産出額を誇り、農協の人材が豊富なはずの北海道で何が起きているのか。
次ページでは、JA北海道中央会の内紛に見る農協役員の劣化の実態と、農協の上部団体の「不要論」の高まりを明らかにする。