JAグループで、農家代表の役員と職員出身の役員の対立が激化している。特集『儲かる農業 下剋上 ピンチをチャンスに』の#8では、「北海道農協界のドン」と称されるJA帯広かわにしの有塚利宣組合長に、農協やその上部団体のガバナンスについて聞いた。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
北海道の大物組合長が切る!
農協や連合会のガバナンス問題
安倍晋三氏や菅義偉氏などの歴代首相や日本銀行の黒田東彦総裁といったビッグネームがこぞって視察に訪れる農協が北海道にある。ナガイモの輸出に取り組んできたJA帯広かわにしだ。30年にわたり同農協を率い、JA北海道中央会やホクレンのキングメーカーとして君臨してきたのが有塚利宣組合長だ。故・中川昭一氏の後援会会長を務めるなど強い政治力を持ち、中央政界にも影響力を及ぼしてきた。
――農協改革や農協中央会の在り方について考えを聞かせてください。
農業の主役は農民であり、それを援助するのが農協の役目――。これは私の哲学です。
十勝農業高校の7年先輩に当たる中川一郎さん(元農相)を応援する中で、そう強く思うようになりました。
一郎さんは「十勝の農家を豊かにしたいんだ」と、懐に辞表を忍ばせて、田中角栄元首相に集出荷施設の整備を要請しました。一郎さんが亡くなった後、息子の昭一さんを私は後援会長として支えました。
十勝では、未来の農業のビジョンを描いて、それを実現するために政策要請する「提言農業」を実践してきました。その結果、十勝が日本の農業生産額の1割を担うまでになりました。
飼料の値上がりで経営危機に陥った酪農家からは、JA北海道中央会の農政運動が現場の窮状を踏まえていないと怒りの声が上がっている。
――道中央会の政策要請は提言型になっているでしょうか。補助金の増額を求めるだけでは、説得力のある要請にはなりません。
いまこそ政策を提言すべきです。外国に頼っている飼料を道内で作ればいい。北海道なら、「子実コーン」を地賄いできます。地域の強みを生かす政策を打ち出すべきなのです。
――道中央会の現状をどうみますか。
次ページでは有塚氏が、農協の上部団体のガバナンスの問題を激白する。