ノーベル文学賞を受賞した
作家の大江健三郎
『坊っちゃん』『坂の上の雲』の小説やNHKスペシャルドラマの舞台になったのが、愛媛県の県庁所在地である松山市だ。その県都で藩校をルーツとし、多くの文人を輩出してきたのが愛媛県立松山東高校である。
現代人の苦悩と希望を描く小説でノーベル文学賞を受賞した作家の大江健三郎が、この3月3日、88歳で死去した。大江は松山東高校の卒業生だった。
大江は愛媛県立内子高校から松山東高校に編入してきた。文芸部に所属し、部誌「掌上」を編集し自身の詩や評論を掲載した。
東大文学部仏文科に進学した大江は在学中の1958年に、『飼育』で芥川賞を取った。当時23歳で、56年受賞の石原慎太郎(神奈川県立湘南高校卒、2022年2月死去)と並ぶ最年少タイだった。
大江は『万延元年のフットボール』や、長編エッセー『ヒロシマ・ノート』『沖縄ノート』などを発表、市民団体「九条の会」では呼びかけ人の一人になった。
94年にはノーベル文学賞を受賞した。日本人のノーベル賞受賞者は累計で28人。その内、文学賞は68年受賞の小説家・川端康成(旧制大阪府立茨木中学・現茨木高校卒、72年4月死去)と大江しか出ていない。
なお、愛媛県の高校出身者でノーベル賞を受賞しているのは、大江のほか物理学賞の中村修二(2014年受賞、県立大洲高校卒)と、同賞の真鍋淑郎(21年受賞、旧制県立三島中学・現三島高校卒)の計3人だ。