職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。

仕事ができる人は「それ意味ある?」と言われて、なんと返すのか?Photo: Adobe Stock

その仕事、「ただの作業」ではないか

「ほうれんそう(報告・連絡・相談)がなかなか定着しないんです……」

 そんな悩みはありませんか。これは毎年のように企業から相談を受けるテーマです。
 若手に報連相を定着させるための方法が1つあります。

 それが、「目的の共有」です。
 目的の見えない仕事は、「ただの作業」になります。

 たとえば明日、あなたの家にお客さまを招くことになったら、部屋を掃除しますよね。
 その目的は、きれいな部屋でお迎えしたいからでしょう。

 一方で、私がアメリカにいたときに、アルバイトの方に、店内に掃除機をかけるように伝えたときのことです。
 彼はすぐにかけてくれたのですが、私が後で確認したところ、掃除機をかける前のフロアと変わっていません。
 彼の掃除機をかけるという行為には、「きれいにするため」という目的がありませんでした
 私に言われたから、掃除機に電源を入れて動かすという「作業」をしただけです。

 報連相も、これと同じです。
「言われたからやっているだけ」という意識では、効果的な報連相にはなりませんよね

目的を「見える化」しよう

「ほうれんそう」を定着させるためには、仕事の目的を伝えて、「それをすると誰が喜び、しないと誰が困るのか」を共有することです。
 そうでなければ、仕事ではなく「作業」のままです。

「目的の共有」の効果的な方法は、「文書として書いて渡す」ことです。つまり、見える化です。
 口頭だけの共有では、すぐに忘れてしまいます。
 見せながら口頭で伝えると記憶が深くなりますし、会議の後にチャットやメールで送れば保存もできます。

 見える化することには、もう1つメリットがあります。
 それは、社内の「やる意味のない慣習」がなくなることです。

 昔からの慣習で、なんとなくやっていることでも、「意味は何なのか?」を考えることで、ムダを省くことができます。
 部下や新人から、「何のためですか?」と聞かれたことは、あらためて、その必要性を考えることができる機会です
 そのように捉えて、日々の業務に取り組みましょう。

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。