言葉遣いにこだわる人に
どう接すればよいか
今では失礼とされることも多い目上の人への「ご苦労様です」も、飯間氏によれば、昭和時代には目上の人に対して普通に使われていたという。
「『ご苦労様です』のように丁寧だった言葉も、時代を経て使用が避けられるようになることはあります。ただ、そうした言葉の歴史についての知識があれば、年配の人が昔の感覚で使っている例に接しても、一概に失礼、間違いだと片付けない、心のゆとりが生まれるでしょう」
「ら抜き言葉」もやり玉に挙げられることが多いが、これも必ずしも誤りとは言えないという。
「ら抜き言葉については、受け身表現と可能表現を区別したいという気持ちから生まれたという指摘も多いですね。このように、言葉の変化というのは、なんらかの意味があって起こるものです。デメリットの一方、メリットがあって使われている場合も多いので、一概に正誤を指摘することは難しいのです」
しかし、「言葉遣いにこだわる人」は日常生活でも職場でも存在するだろう。そんな人への接し方はどうすればいいのか。
「ガチガチに言葉遣いにこだわる人はかなり少数派だと思います。ただ、そのように、ことあるごとに『間違い』を指摘する人は、こちらが気をつけていても、きっと何か言うものです。『いつも勉強になります』と一応敬っておくか、そうでなければ、適度にディスタンスをとるのが賢明でしょう。職場でルールを設けている言葉ならともかく、気楽な日常会話の表現にまで介入するのは、コミュニケーション上どうかと思います」
逆に自分が相手の言葉遣いに引っかかる場面もあるだろう。
「自分は他の人の言葉遣いに引っかかるし、他の人はこちらの言葉遣いに引っかかります。まあ、お互い様と考えれば腹も立たないでしょう。言葉遣いはファッションと同じで、自分も相手もそれぞれ好みがあります。ハイヒールもあるし、フラットシューズもある。『どの言い方が正しいか』よりも、お互いの伝えたいことが間違いなく伝わっているか、そちらのほうに注意を向けたほうがいいでしょう」
お互いのファッションの違いを認め合いつつ、相手と良好なコミュニケーションをとっていきたいものだ。