アクアラインの功罪、木更津のイマ
さて、久留里線の木更津駅~久留里駅間も利用客が激減していると冒頭で述べたが、その実態を探ってみよう。この区間は高校が複数あり、朝晩は通学する生徒でにぎわっている。しかし、同区間の営業係数は「1273円」。利用者も30年間で75%近く減少している。
その理由は、「通学利用の減少」「アクアラインの影響」の二点に尽きる。
まず、通学輸送では、私立高校のスクールバスの影響がある。複数の私立高校が大きな専用バスターミナルを木更津駅近くに設置し、広範囲から生徒を集めている。
そしてなんといっても、1997年に開通した東京湾アクアラインの影響が大きい。アクアラインの入り口に近い「木更津金田バスターミナル」には、首都圏方面への高速バスが分刻みでひっきりなしに発着する。高速バスは、東京や横浜・川崎方面へ行くのに鉄道より断然早いとあって、久留里線から内房線へ乗り継いでいた利用客を根こそぎ奪っていった。
そのため、この辺りに住む都心への通勤者は、広くて格安な駐車場(1日300円程度)を擁する郊外のバスターミナルまでクルマで向かい、高速バスに乗り継ぐようになったという。
鉄道利用の減少とアクアラインの台頭は、木更津駅周辺を一変させた。駅前に店を構えていた「木更津そごう(サカモトそごう)」や「ダイエー」はすでに閉店。代わって「三井アウトレット木更津」や「イオンモール木更津」が人気となっている。
「東京から100km圏内」がウリの木更津市は、アクアラインによって大きな恩恵を受けたものの、木更津駅や久留里線には打撃だった。近年、住人の増加や企業の進出が続いているのは、バスターミナルに近い金田地区や、国道16号バイパスに近い地域などだ。