チャリより遅い?設備改修にも課題を残す
さらに、木更津駅~久留里駅間が乗客を取り込むネックとなっているのが、全体的な設備改修の遅れだ。同路線は木更津市・袖ケ浦市・君津市の市境を縫うように走っているためか、沿線自治体が一丸となって改良に取り組む動きが、今ひとつ見られない。
例えば、完全にバリアフリー化が完了しているのは木更津駅のみ。総合病院が目の前にある上総清川駅ですら、ホームから駅舎への段差がそのまま残り、移動経路の案内看板すら見当たらない。
また、駅前ロータリーや駐輪場が、ほとんどの駅で貧弱なままだ。そのため狭い路肩で手早に子どもを降ろし、瞬時に立ち去る光景が、平日朝には各駅の近くで見られる。
そもそも久留里線は、「遅い」ことで悪名高い。地元の人に言わせると、車で20分もかからない区間の走行に30分を要するほどの遅さは、昔から変わっていないという。
このことを象徴するような、木更津高校出身者の間で有名な替え歌がある。「宇宙戦艦ヤマト」のメロディーで、「雨降りゃ遅れ、風吹きゃ止まり、チャリより遅い」と久留里線を揶揄(やゆ)して歌う替え歌だ(卒業年によって歌詞は多少変わるらしい)。こうした替え歌が少なくとも30年以上、歌い継がれているほど、列車のスピードアップがおざなりになっている。
総じて筆者が久留里線に対して思うのは、(1)JRがバスへの転換を推奨した区間は、確かに、鉄道が存続すべき理由が見当たらない、(2)その他の区間は、バリアフリーやスピードアップなど最低限の改善を早急に実施すべき、といったところだ。特に後者は、観光利用の促進にとどまらず、「日常利用を増やすのに何をすればいいのか」の視点で、木更津・袖ケ浦・君津の3市が協力して具体案を描くことも必要ではないだろうか。