「銭湯は料金を変えられない代わりに、補助金や税金、水道代が優遇されていますが、それも現在の状況には焼け石に水。よほどの人気施設でない限り、1日のお客さんは数十人ですからね。仮に1日80人が来ても月の売り上げは大体120万円。そこからエネルギーコストなどを引いたら、ほとんど利益は出ません。そのため、アルバイトを雇いたくても雇えず、高齢の経営者が掃除などの力仕事までせざるを得ません。体力の限界や施設の老朽化とともに閉店してしまうケースも多いです」
このような経営的に厳しい状況であるから、後継者のなり手もなかなか見つからない。それゆえに、高齢でも働かざるを得ない……という状況になっているのだという。
しかし、昨今のサウナブームにより、待ち時間が発生するほどにぎわっている銭湯も見受けられるが……。
「そもそも、サウナブームは人口の多い都市部だけで、ほとんど地方へ波及していません。さらに、サウナがない銭湯やサウナが狭い施設、古い施設も恩恵は受けていないのです。人気があるのはスパなどのきれいで、休憩スペースも充実していて、コワーキングスペースなどもあるところです。設備のリニューアルで人気になる銭湯もありますが、多くの施設はそもそも改修やリニューアルするだけの資金がありません。一方、東京近県では銭湯において『サウナ料金』という別途の料金があるため、多少経営を助けてはいます。それは公衆浴場法に定められているでもなく慣習の上乗せ料金なのですが、サウナブームが波及していない地方にはほとんどありません。こうした中、苦境にあえぐ銭湯は、施設の取り壊し資金が残っているうちに閉めてしまうのです」
サウナブームは来年まで?
全国の温泉施設も危険水域
しかし、閉店する施設がある一方で、比較的小規模のサウナ施設が毎月のようにオープンしている。この理由を太田氏は次のように話す。
「2020年から事業再構築補助金が開始されたんです。要は新規事業をするとお金が出る。数千万円がもらえ、しかもそれは返済しなくてもいい。そこで、サウナブームが巻き起こる中、温浴業界以外の企業が小型のサウナ施設をオープンし始めました。とはいえ、ブームは都会だけなので地方の施設は苦労していると聞きます。ちなみに個室や会員制といったプライベートサウナも近年オープンしていますが、その需要は3年後にはかなり減少するとみています」
そう太田氏が語る背景には、サウナブームの陰りがあるという。