職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。
「メールで言ったからいいだろう」
と、都合よく思わないこと
仕事でのやりとりは、いまやメールが中心です。
特に、依頼や断りのメールは、特に気をつかうことでしょう。
私の知り合いに、金融機関の窓口を担当する「気づかいの女神」がいます。
「一生を幸せにする人は1人だけれど、一瞬を幸せにする人は何人いてもいい」など、彼女の言葉から多くのことを学びました。
その中の1つに、「お断りしたお客さまの顔を覚えておくこと」というものがあります。
金融機関の閉店は15時ですから、閉店後に訪れるお客さまもいます。そんなときには、対応をお断りしなくてはなりません。
そして、翌日以降に来店されたときに、
「この前は失礼いたしました」
と伝えるようにしているそうです。
相手にしてみれば、断られた前回の記憶が「覚えていてくれた」という嬉しい記憶に上書きされます。
何より、覚えていることに驚くことでしょう。
自分から言わないと意味がない
そんな彼女の例をお伝えすると、「一度会っただけの人の顔を覚えておけるなんて特殊能力だ」と返されるかもしれません。
そういう側面もあるかもしれません。
しかし、そこから学べる、誰にでもできることがあります。
私たちは、日常業務の中で「断る」ということをしています。
特にメールでの依頼やお誘いには日常的に断りの返事をしているはずです。
さて、社内外でその人に会ったときに、
「この間はお断りしてごめんなさいね」
「お力になれず申し訳ありません。また何かあったら言ってくださいね」
と、自分から言えているでしょうか。
断ったほうは覚えていなくても、断られたほうは絶対に覚えているものです。
とはいえ、相手のほうから、「この間は急にお誘いしてすみません……」と言わせてしまうのはNGです。
相手のほうからお誘いのメールを、心の壁を越えて送ってくださったのです。
次は、あなたのほうから声をかけましょう。
お断りしたことは、スマホなどにメモしておき、次に会ったとき、必ず自分から先に触れるようにしましょう。
いい印象に上書きされ、次回のお誘いもされやすくなります。
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。