経済的に恵まれない母子家庭に育ち、高校・大学は奨学金を借りて卒業。そのため、1000万円に迫る“奨学金という名の借金”を背負うことになった。そこで、郷里に母を残して上京、東京国税局の国税専門官となった。配属を希望したのは、相続税調査部門。「どうすればお金に悩まされずに済むのだろう?」と考え「富裕層のことを知れば、なにかしらの答えを得られるのではないか?」と思い至ったからだった。国税職員のなかでも富裕層が相手となる相続税を担当するのは、たった1割ほど。情報が表に出てくることはほとんどない。10年ほど携わった相続税調査で、日本トップクラスの“富裕層のリアル”に触れた『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の著者が、富裕層に学んだ一生お金に困らない29の習慣を初公開する!
6兆円以上を寄付した“投資の神様”
【前回】からの続き アメリカの経済誌『フォーブス』は、“投資の神様”と呼ばれるウォーレン・バフェット氏の寄付額の累計が、461億ドル(約6兆223億円=1ドル135円換算)と試算しました。
米マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏が率いるビル&メリンダ・ゲイツ財団や米アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏など、海外では富裕層によって桁違いの金額が寄付されています。
日本には寄付の文化がない?
こうした社会貢献は、フィランソロピー(philanthropy)と呼ばれ、背景にはキリスト教の思想があるといわれています。フィランソロピーの語源が、ギリシャ語の愛(フィリア)と人類(アンソロポス)であることからも、西洋では古くから人のために奉仕をする文化が根づいていることがわかります。
一方、「日本には寄付の文化がない」といわれることがあります。実際、内閣府によると、アメリカの寄付総額がGDP(国内総生産)の2.2%であるのに対して、日本は0.11%という非常に低い割合にとどまっています。
それでも、日本の富裕層にも寄付をする傾向は見られます。私も相続税調査で、多額の財産を寄付する富裕層を何度か目にしたことがありました。富裕層には地元の自治体や母校、仕事の関連団体など、さまざまなつながりがありますから、そうしたつながりを大事にする意識から寄付をすることが多いようです。
資産100億円を築いた
伝説の億万長者の貯金術
日本の資産家で、普通では考えられない規模の寄付をしたことで知られるのが、事業家の本多静六氏です。1866年に現在の埼玉県で生まれ、造園技師、林学者として活躍しました。本多氏が行っていたのが、「月給4分の1天引き貯金」というものです。
社会人になってから、本多氏は給料の4分の1を貯金し続け、その貯金を株や公共事業などに投資したそうです。その結果、現在の価値に換算して100億円はくだらない資産を築きました。
伝説の億万長者は
貯めたお金をどう使ったのか?
本多氏が本当にすごいのはここからです。本多氏は、長年の努力により築き上げた財産のほぼすべてを教育・公共機関に寄付したのです。
たとえば、私財を投じて得た埼玉県秩父地方の山林2600ヘクタール余りを、奨学金事業創設のため、埼玉県に寄付。これを機に生まれた「本多静六博士奨学金」は、埼玉県で今も引き継がれています。【次回に続く】
※本稿は、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。