ウガンダでロレックスを食べてみた
筆者はウガンダ北西部、南スーダンとコンゴ民主共和国と国境を接し、両国からの難民を受け入れる西ナイル地域にて、難民と地元住民の平和的共存を目指す事業に関わっています。
難民に寛容な政策を採るウガンダでは、地方自治体が難民の影響やニーズにも対応するとの方針を打ち出しており、そのための仕組みづくりを支援する活動です。
12県を抱える地域の悪路を数時間かけて移動したり、途中、ナイル川を渡る際、一隻だけの定期船が満杯となり次を待ったりすることもしばしば。昼食を取る時間がない時は、筆者もロレックス屋台を探します。
ある時、ウガンダ人同僚のミリー(仮名)と一緒に注文しましたが、彼女は真剣な顔つきで「卵はひとつかふたつかを決めるのよ」と言いました。注文を受けた職人は、手早くカップに卵を割り入れ、鉄板に伸ばしてオムレツを作るので、早く伝えなければならないのです。卵ひとつは1500シリング(約50円)くらい、ふたつで2000シリング(約70円)くらいですが、一般的な生活をするウガンダ人にとっては重要なのです。
棒状のロレックスは、バナナのように片手で食べられ、うっすらと焦げ目の付いたチャパティと柔らかいオムレツの絶妙なバランスは食感もよくおいしいです。
筆者はカンパラから車で8~9時間北上する西ナイル地域の道中で食べたため残念ながら店の紹介はできませんが、首都カンパラではこの屋台フードを出すレストランも増えているようです。屋台はあちこちにありますのでウガンダを訪れたらぜひ食べてみてください。屋台で頼む場合、卵ひとつであれば、“One Rolex with one egg.(ワン ロレックス ウィズ ワン エッグ)”と言えば注文できます。
最後に
ウガンダは1970年代の独裁政権下で恐怖政治を経験し、多くのウガンダ人が隣国の南スーダンやコンゴ民主共和国に逃れました。そうした苦渋の過去も影響してか、ウガンダ人は物静かで奥に秘めたようなところがあります。しかし、静かに交わす会話のなかでときおりユーモアが飛び交うのもウガンダの魅力。ロレックスという名にもそのセンスが表れています。
“We don’t wear Rolex. We eat them.(私たちはロレックスを着けない。食べるんだ)” なのだそうです。
執筆者:安西尚子
国連開発計画(UNDP)等勤務を経て、コンサルタントとして世界銀行や国際協力機構(JICA)のガバナンス案件に従事。南スーダン、アフガニスタン、パレスチナ、バングラデシュなどでプロジェクトリーダーを務める。アイ・シー・ネット株式会社所属。
※本記事は『地球の歩き方』からの転載記事です。