注目テーマをメッタ斬り! “人気株”の勝者・敗者#5Photo by Masato Kato

「SaaS×フィンテック」という成長分野で、直近5年間の平均売上高成長率が49%と快進撃を続けるマネーフォワード。投資先行型のビジネスモデルであるため赤字が続いているが、経理や人事労務を効率化するバックオフィス向けSaaSに加え、請求業務代行や決済サービスなどファイナンス分野も売上高が拡大している。『注目テーマをメッタ斬り!“人気株”の勝者・敗者』(全18回)の#5では、辻庸介社長に「黒字化のタイミング」や「お金のNo.1プラットフォーム」への道筋を聞いた。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

テーマ化してからの参入では遅い
他社がやっていない分野に挑戦する

――「SaaS(Software as a Service)×フィンテック」という成長分野で先行して事業を展開しています。テーマ性は創業時から意識されていたのでしょうか。

 いや、初めからそこまで深く組み立てられないですよ。進みながら、手探りです。僕たちはワンルームマンションから事業を始めました。そのときに「ユーザーの課題をテクノロジーで解決する」ということと「得意で興味があるお金の分野」を中心に置いたわけです。その陰にはいっぱい失敗したサービスがあります。

 今でこそ「フィンテック×SaaS」といわれますけれど、言葉に出た段階で参入しても遅いじゃないですか。実際、言葉になる前にやり始めている会社が結局は残っている気がしています。

 今も大事にしているバリューである、ユーザーの本質的な課題を理解し、「ユーザーフォーカス」(ユーザーの想像を超えたソリューションを提供する)と「テクノロジードリブン」(新しい技術を使った新しいサービス)を深掘りし続けている感じですね。

 ベンチャーなので他社がやってないことにチャレンジしていきます。SaaS×フィンテックのリーディングプレーヤーとしての自負はありますね。

――テーマができてからの参入では遅いということですか。

 難しいですよね。メルカリさんもCtoC(個人間取引)マーケットが話題になる前に始めていましたよね。

 TAM(獲得が可能な最大市場規模)が大きい領域だなとは実感しています。SaaSには(業界を横断して利用できる)ホリゾンタルと、(特定の業界向けの)バーティカルがあります。僕らはホリゾンタルなので、全企業、全個人向けのサービスです。

 マーケットが大きいので、そこはラッキーでした。エンジニアもお金も限られたリソース。どこに配分するかはすごく考えています。

 今、バックオフィスのクラウド化率は20%といわれています。逆から見ると、80%がまだクラウドを使っていません。人手不足もありますし、クラウドを使わない理由はもうだいぶなくなってきていると思います。

――2023年11月期第1四半期決算の売上高は予想の上限を上振れしました。今後の成長の見込みについて教えてください。また投資先行型ビジネスで赤字が続いていますが、黒字化のタイミングは。

マネーフォワードの5年平均の売上高成長率49%は、東京証券取引所に上場する約3900社の中でも上位1%以内に入るが、快進撃は続くのか。次ページでは辻庸介社長に「SaaS×フィンティック」を武器に“お金のNo.1プラットフォーム”になるための戦略を聞いた。