急激な負担増を避けるために
9月末まで一部に公費負担が継続

 これまで、COVID-19は2類相当の対応が取られていたため、検査や治療にかかった医療費の自己負担分は、次のように原則的に公費負担の対象となっていた。

●COVID-19の2類相当での対応(2023年5月7日まで)

・外来(通院)…検査費用や治療費の自己負担分に公費支援が行われていた。
 医師が診療のために必要と認めたPCR検査や抗原検査などの検査費用、COVID-19の陽性が判明した後の処置、医薬品などは、公費負担の対象となり、自己負担分が無料になっていた(ただし、COVID-19かどうかの判定前にかかる初診料などは、公費負担の対象外)。

・入院…治療費や食事療養費などの自己負担分に公費支援が行われ、原則的に患者の自己負担なし
 感染症法では、都道府県知事が、まん延防止のための入院の勧告や隔離を行うことを認めている。だが、強制的な入院は、一時的にせよ、個人の権利を制限することになる。そのため、自治体の勧告や措置によって入院した場合は、治療にかかった検査、医薬品、医学的処置、入院費などは、原則的に公費負担となる。ただし、高所得層に対しては、一定の負担を設定している自治体もある。

 季節性インフルエンザや麻しんなど、5類感染症に分類されているものは、自治体による入院・隔離の勧告はなく、かかった医療費に対する公費負担もない。この考えにのっとると、COVID-19も5類感染症になった段階で、公費による支援はなくなることになる。

 だが、薬価収載されたばかりのCOVID-19の治療薬は、現状では高額だ。

 たとえば、ラゲブリオカプセル200㎎という抗ウイルス薬は、1カプセル当たり2357.8円(2023年4月末現在)。18歳以上の人に用いられる標準的な治療は、1日8カプセル(1回4カプセル×2回)を5日間服用する。5日間の薬剤費の合計は9万4312円だ。

 健康保険が適用されても、3割負担で約2万8290円、2割負担で約1万8860円、1割負担で約9430円が自己負担額ということになる。

 また、重症化して入院し、陰圧室を利用したり、人工心肺装置などが装着されたりすると、数百万円単位の高額な医療費がかかる。医療費が一定額以上になると、健康保険の高額療養費が適用されるが、公費負担がない場合の自己負担額は、年収500万円の70歳未満の人で、医療費100万円だった場合は、食事代と合わせて約10万円になる。