就活本に初めて「自己分析」の考えを取り入れた『絶対内定』
その最新作となる『絶対内定2025』が刊行になる。本書は2025年卒以降の学生向けの自己分析、就活対策決定版である。
ただ内定をとるだけではなく、「本当にやりたい仕事がわかる(やりたいことに気づける)」「自分らしく働ける会社と出合える」「入社してから『こんなはずじゃなかった』と後悔しない」ための1冊であることが大きな特徴だ。
これまで10200人以上に就職指導をし、その“第一志望”内定率が93%というキャリアデザインスクール「我究館」がもつノウハウがこのシリーズには詰まっている。
今回は同書の刊行を記念して、その内容の一部を特別に公開する。(構成/朝倉陸矢)

絶対内定Photo: Adobe Stock

就職で失敗する4大原因

 就職に失敗した先輩たちの原因を分析してみよう。次の4つのパターンに分けられる。

1.夢もやりたい仕事も自分に合う会社も、分からないまま就職した
2.夢ややりたい仕事は分かっていたが、自分に合う会社が分からなかった
3.夢ややりたい仕事も分かっていて、自分に合う会社も分かっていたが、内定できなかった
4.夢ややりたい仕事も分かっていて、自分に合う会社に内定できたが、配属が違って結局何年たってもやりたい仕事に就けなかった

つまり、就職に失敗しないためには、自分の将来の夢、目標に結びつくと考えられる仕事に就くこと、すなわち、「夢の実現のためにやりたい仕事ができて、自分に合っている会社に入り、近い将来、希望どおりに配属されるようにトップで内定すること」を実現できればよいのだ。

そのためにすべきことが我究である。我究の具体的な進め方(我究ワークシート)は第8章に載せてあるので、じっくり読んでから本気で取り組んでほしい。

「コネで電通入社」の末路

 就職活動をあなどってはいけない。「自分が満足できる人生」を探し出す、絶好のチャンスなのだ。

 就職活動をした上で、就職しなくたっていいのだ。仕事がすべてではないし、サラリーマンだけが生き方じゃない。また、誰もがイキイキとできる生き方や環境(会社・仕事)など存在しない。100パーセント満足のいく会社も存在しない。

「自分で心から納得できるかどうか」

がカギなのだ。だからこそ、就職活動を「仕事探し」と割り切ってしまってはいけない。おおげさでも何でもなく「自分の人生探し」なのである。

 僕の後輩で、強力なコネで電通に行った人がいる。正直言って、「こいつ、やっていけるのか」と心配だったが、案の定不安は的中した。地方に配属されたので4年ぶりに会ってみると、彼はほとんど死人同然になっていた。イキなスーツをばっちり着こなしてはいたけれど、まったく覇気がない。愚痴ばかりたらたらこぼしている。

 こういう社員は珍しくない。電通に限らず、三菱商事にも東京海上にも、官僚にも、テレビのキー局にも大勢いる。むしろ一流企業にこそ多い。ポテンシャルが高いにもかかわらず、ステータスが保身と慢心を呼び、突出する勇気、飛び出す勇気をステータスがスポイルしているのだ。そういうカルチャーがはびこっているのだ。

 やる気と能力はあるけど何をやりたいのか分からないまま、勢いで面接を受け、ラッキー(?)にも内定し、入社してから、理想と現実のギャップにもがき苦しんでいたり、数年たってから、「やっぱりやりたかったのは、この仕事ではない」と気がつき、悩む

 心機一転、転職できるほどのパワーがあればいいのだが、その頃にはそれもなくなっている。結局、入社当時のやる気はどこへやら。惰性で仕事をし、何かあると会社のせいにして、毎日悶々と酒を飲んで愚痴をこぼしながら過ごすことになる。

就職活動は「人生」を探す絶好のチャンス

「天職を得たよ」と、生き生きと仕事をしている人がいる一方で、精神的に失業している哀れな社員がどこの会社にもいくらでもいるのだ。

「そういう人たちは弱い人間だ」と、片づけてしまうのは簡単だ。しかし、毎日、朝から晩までいる会社・仕事が合わないことほど不幸なことはない。嫌いな相手と結婚するようなものである。

 よく就職講演会などで、「どんな仕事も本気でやれば面白くなる」という意見の人もいる。これはきれいごとだと僕は言いたい。本当の仕事の面白さを知らない人か、サラリーマンの実情を知らない人のセリフだとさえ思ってしまう。

 また、就職においては、本命を受ける前に多くの企業を研究し、また実際に受けて場数を踏んでいくことは大切なことである。自分の実力を見極めずに、こだわりだけが強いのも通用しない。

 しかし、最初からではないにせよ、少なくともある時点で、「これだ!」と、思える仕事でなければ、たとえ情熱を持って一生懸命やれたとしても、のめり込めたとしても、そこそこの達成感とそこそこの喜びしか味わえないと経験的に僕は思う。ましてや、会社の仕事によって関わっていく人間たちも、その考え方も違うのだからなおさらだ。

(本稿は、『絶対内定2025』からの抜粋記事です)

杉村太郎(すぎむら・たろう)
(株)ジャパンビジネスラボ創業者、我究館、プレゼンス創業者・元会長。
1963年東京都生まれ。慶應義塾大学理工学部管理工学科卒。米国ハーバード大学ケネディ行政大学院修了(MPA)。87年、住友商事入社。損害保険会社に転職し、経営戦略と人材育成・採用を担当。90年、シャインズを結成し、『私の彼はサラリーマン』でCDデビュー。92年、(株)ジャパンビジネスラボ及び「我究館」を設立。就職活動に初めて“キャリアデザイン”の概念を導入し、独自の人材育成「我究(がきゅう)」を展開。94年『絶対内定95』を上梓。97年、我究館社会人校を開校。2001年、TOEIC(R)/TOEFL(R)/英会話/中国語コーチングスクール「プレゼンス」を設立。08年にハーバード大学ウェザーヘッド国際問題研究所客員研究員に就任、日米の雇用・教育問題と政策について研究。11年8月急逝。著書は「絶対内定」シリーズ、『新TOEIC(R)テスト900点 新TOEFL(R)テスト100点への王道』(共にダイヤモンド社)、『ハーバード・ケネディスクールでは、何をどう教えているか』(共著、英治出版)、『アツイコトバ』(一部電子書籍はダイヤモンド社より発行)等。
藤本健司(ふじもと・けんじ)
我究館館長
千葉大学教育学部卒業後、(株)毎日コムネット入社。営業に配属され、2年目に優秀社員賞、3年目に社長賞を受賞。2012年「世界の教育問題に対峙したい」との思いから、青年海外協力隊としてケニア共和国で活動。3年間、JICAや現地の省庁と連携し、児童福祉施設における情操教育やカウンセリングに携わり、「人は志や気づきによって大きな成長を遂げられる」ことを実感する。2016年より(株)ジャパンビジネスラボに参画。我究館学生校の主担当コーチとして大学生をサポート。2017年10月より副館長を務め、2021年5月より現職。外資系投資銀行、コンサルティングファーム、総合商社、広告代理店など、難関企業に多数の内定実績がある。著書に「絶対内定」シリーズがある。