ざんねんな上司の特徴

 それは「見当違いの、細かい指摘ばかり出す上司」の出現だ。

 コンサルタントとして数々の職場を見てきたが、知識の更新なしに経験が長いだけの人が偉いとされる職場には、「頭は悪くないけど、専門家としては、はるか昔に旬を過ぎている上司」が存在する。

 そんな旬を過ぎている人が、マネジメントの専門知識を有しているわけでも新しいマネジメントのやり方を試みるわけでもないにもかかわらず、細かい指示ばかり出すと……

 ざんねんな上司の出来上がりだ。

 ざんねんな上司は、かつて社内で昇進するほど仕事ができたのだから、知能としては高い人が多い。

 だから、下の人たちが提案することの論理的な矛盾や、欠点には気づく。

 しかし、学習しない彼の知識は昔のもの

 だから、「実のあるアイデア」や、「良い解決策」がだせない。出せるは経験談だけ。

 つまり「アイデアは出さないくせに、リスクや細かい指摘ばかり言う、ダメな責任者」が出来上がる。

 知識はないのに、権力だけはあり、昔の経験談をたらたら語る。

 周りはそういう人に、困惑し、時間も精神も搾取されてしまう。

 そして、優秀な人のエネルギーが仕事の本質的でない部分に使われる羽目になる。

 これは悲劇だ。

 みなさんの職場はどうだろうか?

 管理職が「あがったポジション」を満喫するのが許されたのは、過去の話だ。

 現在の「専門家集団」としての知識労働者をマネジメントするには、自分自身も専門家として学習を続けなければならないし、そうでない上司は尊敬を集めることができない。

「あの人、昔は優秀な技術者だったみたいだけどね」と言われてしまう。

 もちろん、学習を続けるのはしんどい。

「管理職になってまで、学習を続けたくない」
「いつまでも職人ではいられない」

 と思う人もいるだろう。

 もしそう思ったならば。

「自分の知識はもう古い」と自覚すること。

 そうでないと、遅かれ早かれ、部下の仕事に余計な口を出して、「専門家たち」を困惑させる存在になってしまう。

安達裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役
1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、理系研究職の道を諦め、給料が少し高いという理由でデロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が“本質的でためになる”と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。Twitter:@Books_Apps