「フェルミ推定」は、調べても正確な答えがわからないような一見難解な問題だ。
でも、地頭のいい人はわずかな手がかりだけでパッと概算することができる!
本連載では、ビジネスでも日常のひとコマでも使える超・高速計算テクニックと、どんな難問でも自分なりの答えを導くコツを紹介したイギリスで話題の1冊、『世界の猫はざっくり何匹? 頭のいい計算力が身につく「フェルミ推定」超入門』より一部を特別に公開する。(初出:2021年4月14日)
世界中に猫は何匹いる?
パッと概算できたあなたは「頭がいい」
数年前、ある学校のイベントで十代の聴衆に、「何かの数をざっくり見積もる問題を出してくれたら、この場で答えてみせよう」と持ちかけた。するとある生徒が、「世界中に猫は何匹いますか?」というシンプルな質問をしてきた。
猫は定番のテーマなので、僕は買って出た。そして、こういうふうに考えた。
ほとんどの猫は人に飼われていると仮定しよう。
中には猫を2匹以上飼っている人もいるが、猫がいるたいていの家は1匹しか飼っていない。
僕の住んでいる街を例にして考えれば、イギリスでは5軒に1軒が猫を飼っていると考えてかまわないだろう。
1家庭の人数が平均2人だとしたら、10人あたり1匹の猫がいることになる。
イギリスの人口は7000万なので、イギリスには700万匹の猫がいるとしよう。
ここまではいい。でも、ほかの国ではどうだろう? インドや中国のような国では、イギリスほど猫は飼われていそうにない(どうしてそんなことが分かるかって? あくまでも僕の当てずっぽうだ)。だから世界中での猫と人間の比率は、イギリスよりも低く、20人に1匹くらいだろう。
世界の人口は80億だから、きっと次のようになるだろう。
80億÷20=4億匹
大きく外れてはいないだろう。
ともかく、僕はこう答えた。
すると、聴衆の一人が手を挙げた。
「実際の数は6億匹です」
「本当かい? どうして知っているの?」
「いまネットで調べたんです」
やれやれ。わざわざ答えをひねり出すことなんてなかった。すでに誰かがはじき出していたんだ。