翌週は200枚。徐々に配布枚数は増えていく。しかし、これは何枚やれと我々が命令したわけではない。自分で判断し、チラシを印刷して準備をするものだった。
応接室から課長の叫び声
駆けつけると…
2カ月ほどたったある週末の夜、営業日誌を読んでいた課長から呼び出された。
「目黒代理、ちょっといいか。山田さんなんだけど」
「なんですか?」
「ポスティング1500枚って、1日でできるか?」
「え?いやあ、1日では難しいんじゃないですか?2~3日分をまとめて書いたんだと思いますよ」
「そうか?おとといは1200枚、昨日は1500枚と書いてあるぞ」
「じゃあ、その通り昨日は1500枚投函したんじゃないですか?」
課長は明らかに疑っていた。正直に言えば我々取引先課は稼いでなんぼの営業職であり、新人が虚偽の報告をしようがどうでもいいと思ってしまっていた。
「いや、最初が肝心なんだ、こういうのは。明日、ガツンと言わなきゃならんな」
くだらない正義感だ。悪い予感しかない。そして次の朝、課長に呼ばれて応接室に入る山田さんの後ろ姿が見えた。10分ほどたち、課長が応接室のドアを勢いよく開け叫んだ。
「おーい!誰か来てくれ!」
私たちが応接室に駆けつけると、山田さんが倒れていた。呼吸が荒く白目をむいて泡を吹きながらうめき声を上げている。
「こ、これは…」
私は瞬時に判断した。
「と、とにかく男性は部屋を出よう」