事業開発、技術、経営、営業
4部門のナレッジを抽出して共有する

 会社が複雑・不確実化に対応するには、どうすればいいのか。この部分における我々の役割は、「最新ナレッジの抽出と共有」です。

 リクルートは、ナレッジマネジメントにものすごく力を入れています。事業、部署ごとにも行われていますが、全社的にはもともと「トップガン」という営業部門の横断型ナレッジマネジメントからスタートしました。今では、組織、領域を超えた横断型ナレッジマネジメントになっています。

 大ざっぱに言うと、グロースという事業開発・改善部門、エンジンというテクノロジー部門、ガーディアンという経営スタッフ部門、そして、顧客接点のトップガンと職種ごとに分けて、「FORUM」という名称で、年1回開催。それぞれの職種ごとの最新チャレンジを紹介しています。

 このFORUMには、下図のような3つの効能があります。

 FORUMを推進してきた結果、リボンモデルを減衰させず、さらに強化してSaaSと合わせた「ドカンモデル」としてアップデートできました(下図参照)。FORUMで出てきた案件を、新しい自分たちの力にするための事例集という形でひも付ける。そして、アップデートされたコンピタンスを普及することに力を入れています。

プロセスの一部分だけを最適化しても
現場全体の生産性は上がらなかった

四家千佳史(以下、四家) コマツは、主にミニから超大型までの建設機械や鉱山機械などを製造している企業です。

 コマツでは、マーケティング部門を中心に「ブランドマネジメント」という活動をしています(下図参照)。顧客視点で、しっかり顧客とつながり、顧客を理解していこうという取り組みですが、要は「どれだけ売ったか」といった取引量の管理ではなく、顧客に「コマツがいないとビジネスにならない」と思っていただけるような関係性を高めていこうというものです。そのため、マーケティング部門は顧客が抱えている課題を常に見る習慣がついています。

 日本の建設業界は、深刻な労働力不足という課題に直面しています。この課題解決のためには、建設業界において一人一人の労働生産性を上げていくことが必要です。コマツはあくまでメーカーですので、まずは自分たちの製品でこの課題を解決しようと考えました。

 そこで、「ICT建機」という、3次元でマシンを自動制御、半自動制御する機械を開発したのです。これにより、さまざまな現場で省人化ができ、安全性を高められます。

 一方で、ICT建機という「モノ」を顧客の現場に入れてみたものの、実はあまりうまくいかないケースが多くありました。我々は現場をよく知っているつもりでしたが、それは我々の製品が使われるプロセスの部分だけだったのです。

 仮にその部分だけモノで最適化したとしても、それは部分最適にすぎません。コマツの機械が使われる一つ前のプロセスでボトルネックがあった場合、現場全体の生産性が上がらない。今さらながら、それに気付いたのです。

 我々は反省しました。やはり、ものづくりの会社はどうしてもモノから顧客を見てしまう。だから一度、モノから離れようと考えました。