幸せの三段重理論本書より。幸せの三段重理論 拡大画像表示

お金や名声を求める前に
健康や人とのつながりを大切に

 ちなみに、世界幸福度指数が高い国の人は、お金や名声よりも、健康やつながりを重視していることがわかる。

 そのような背景もあり、昨今特に注目されているのが「セロトニン」であり「オキシトシン」だ。これらによって得られる幸福感には持続性がある。

 簡単かつ大まかに分類させていただくと、「セロトニン」は身体的ウェルビーイングであり、「オキシトシン」は精神的ウェルビーイングだと言えるようだ。

 身体的ウェルビーイングとは身体的に良い状態であること、すなわち健康であるということ。そして精神的ウェルビーイングとは精神的に良い状態であることだ。

 ここで、身体的な健康はイメージしやすいだろう。適度な睡眠とバランスのとれた食事、適度な運動。朝、朝日を浴びるとセロトニンが放出され、14時間後にはしっかりと眠たくなる。

 では、精神的に良い状態とはどんな状況を指すのか? どうすることでその状態となるのか?

 孤独担当大臣を任命するなど、世界でも先駆けて精神的ウェルビーイング向上に向けて取り組んでいるイギリス。イギリスの国民保健サービスは、精神的ウェルビーイングの獲得方法として、以下5つを推奨している。

1 地域や家族とつながりを持つこと。

2 身体的運動を行うこと。自分が楽しめ生活の一部になるようなものがよい。

3 スキルを得ようと学ぶこと。料理、楽器、自転車修理などからでよい。

4 他の者に与えること。言葉や笑顔のような小さなものからでよい。

5 今この瞬間に注目すること(マインドフルネス)。

“すみません”を“ありがとう”の
ポジティブワードに置き換える

 ハーバード大学の研究では「人と良い人間関係を築くこと」、慶應義塾大学の研究ではつながりと感謝から生まれる「ありがとう因子」が、“幸せ”を得る上で極めて重要なキーワードであることがわかっている。

 人から感謝されると自己肯定感が向上する。自分が役に立つことができたという感覚を得る。そして感謝の言葉をくれた相手に対して好感を抱く。何か別の機会さえあれば、その相手にまた同じようにしてあげたいと考えるかもしれない。

 実際、“ありがとう”を言うことで、オキシトシンとエンドルフィンが分泌されるという。さらには、言った人だけではなく、言われた人からも分泌されるそうだ。すなわち、“ありがとう”の言葉で自分自身も相手も良い状態になるのだ。感謝の言葉が双方の人間関係をより良いものにするのは間違いない。

 しかし、現代社会では“ありがとう”を言う機会、言われる機会が少ないように感じる。

 大きな力を持つこの素晴らしい言葉を、誰もが出し惜しみせず、より使えるような社会にしたい。