想像力を働かせて
“当たり前”に感謝することから

 感謝が自然と身につくようにするために、重要なキーワード、それが“想像力”だ。

 想像力が豊かになると、“ありがとう”の幅が広がる。感謝の力の源泉になるのは、この想像力と言っても過言ではない。

 だから、感謝ができない人は往々にして、想像力が欠乏している場合が多いように思う。

 ぼく自身も自分の家族や友人には親切でも、赤の他人となると不親切な態度になることがある。しかし、ちょっと想像力を働かせれば、その人も、ぼくの家族と同じように、誰かの大切な子どもであり、誰かの大切な親であり、誰かの大切な存在なのだ。

 自分の大切な人に対しては、横柄な態度や傷つけるような言動はしないように、自分の子どもがそのような態度を他人からされると嫌なように、自分もその人に横柄な態度をとるべきではない。

 ところが、そんな当たり前のことでも、日常においてはよく忘れがちとなる。

 店員さんのミスでイラッとしたときには、「この人が自分の子どもだったら、どうするだろう」と、立ち止まれるとよい。「もしかしたら働いてまだ数日目で慣れていないのかもしれない」、「なんらかの事情でたいへんな状況の中、頑張っているのかもしれない」そうした少しの想像力があれば、優しい気持ちで受け止めることができる。

 友人が話してくれた素敵な話を1つ紹介する。

 結婚して長年連れ添っている奥さんに対して、「最近妻に対しての感謝が足りていないのでは」と、ふと自ら気づいたそうだ。そして、そんな感謝が足りていない状態が恒常的にならないようにと実施している心構えを教えてくれた。

「自分が妻にしたことはすべて覚えている。一方で、妻が自分にしてくれたことで覚えているのは(直接言ってもらわない限り)、自分で気づくことができたことだけである。しかし気づくことができたことは、もしかしたら妻がしてくれたことの中のほんの一部かもしれない」

 このことを事あるごとに思い出せると、想像力が働き、また奥さんに対して感謝の気持ちで接することができるそうだ。彼は自分で気づくことができるほんの一部分を、海面に見えている氷山の一角にたとえた。

 海面下に広がる巨大な氷山全体に思いを馳せる想像力、それこそが感謝の源泉である。

 感謝は、自分次第でどんな対象にもすることができるのも特徴だ。

 今この場にいられること、この人との貴重な時間。新鮮な空気を胸一杯深呼吸できること。

 今の当たり前が当たり前ではないかもしれないと想像できる力だ。

感謝の源泉本書より。感謝の源泉 拡大画像表示