「成果に直結する理念」の策定・浸透を通して7年で100以上の組織経営を改善し、新刊『こうやって、言葉が組織を変えていく。』を書いた生岡直人氏が、「思考が成果につながるプロセス」を図で紹介します。(構成/編集部・今野良介)
「どうやってやるか?」の落とし穴
人は、程度の大きさは違えど、成果を求めて行動します。
仕事をしている人であれば、「どうやったら売上目標を達成できるだろう?」「どうやったらお客様に気に入ってもらえるだろう?」。
学生であれば、「どうやったらテストで良い点が取れるだろう?」「どうやったら部活で良い成績が収められるだろう?」。
アスリートならば「どうやったらもっとスキルを身につけられるだろう?」「どうやったら本番で力を発揮できるだろう?」。
そういうことを日々考えながら行動しているでしょう。
日常生活においても、「どうやって遅れずに目的地にたどり着くか?」「どうやって気になる人と仲良くなれるか?」など、小さな成果を求めることの連続です。
下記は、私が考える「成果を出すまでのプロセス」を図解したものです。
成果は行動から生まれ、行動は日々の習慣から生まれ、習慣は思考と感情から作られます。成果をどんどん出す人と、なかなか成果を出せない人との違いは、この成果へのプロセスが身についているかいないかだと考えています。
さて、さきほど列挙した「成果を求める人の思考」には、実は落とし穴があります。
人は成果を出そうと考えたときに「どうやったら」と考えがちです。
つまり、目に見える「行動」を変えようとしがちなのです。
しかし、それでは一向に成果が出ない場合があります。そもそも「成果に結びつく考え方」になっていないからです。
考えるべきは、まず行動に先立つ「思考」と「感情」です。これは行動と違って目に見えないものですが、成果に結びつけるために必要な思考と感情を言葉にするのです。
私はふだん、企業やスポーツチームなどの「成果に直結する理念の策定・浸透」のお手伝いをしています。
たとえばクライアントのある飲食店では、理念の一つに「自分の機嫌は自分で取る」という言葉を掲げています。人の感情には起伏があるため、機嫌の良し悪しは避けられません。しかし、機嫌が悪いまま仕事に取り組んでも、集中力が散漫になったり、仲間との連携がうまくいかなかったり、お客様に機嫌の悪さを見透かされてしまう可能性もあります。
つまり、機嫌が悪いことが、すべての行動の質を下げてしまう。だからこそこの飲食店では、成果を上げるための一つの考え方として「自分の機嫌は自分で取る」を取り入れています。仕事が始まる前や、仕事中のふとしたときにこの言葉を思い出せる状態になれば、機嫌が悪い状態を抜け出すきっかけになります。
そして次に必要なのは、思考と感情を整える言葉を自分に定着させるための「習慣」をつくることです。
思考と感情は、いわば点です。浮かんでは消え、一瞬一瞬で変わっていくものなので、思考を定着させようとする習慣が必要です。良い習慣が自分自身につくられた状態で、いざ行動を起こすと、良い成果に結びつきやすくなります。
ですから、目に見える成果を継続的に上げたいのであれば、目に見えない思考・感情を整え、それを習慣に変えていく。
先ほどの図は、そのプロセスを表しています。
この「思考と感情を言葉として整える」ことこそが理念の策定であり、「言葉を定着させるための習慣をつくる」ことが理念の浸透。そして、その習慣から生まれる行動そのものが理念の実践なのです。(本文終わり)