働きながら3年で、9つの資格に独学合格! 大量に覚えて、絶対忘れないノウハウとは?
「忘れる前に思い出す」最強のしくみ、「大量記憶表」を公開!
本連載の著者は棚田健大郎氏。1年間必死に勉強したにもかかわらず、宅建試験に落ちたことをきっかけに、「自分のように勉強が苦手な人向けの方法を編み出そう」と一念発起。苦労の末に「勉強することを小分けにし、計画的に復習する」しくみ、大量記憶表を発明します。棚田氏の勉強メソッドをまとめた書籍、『大量に覚えて絶対忘れない「紙1枚」勉強法』の刊行を記念して、行政書士であり、宅地建物取引士でもある棚田氏の寄稿記事を公開します。

【不動産の超怖い話】8878万円の損害賠償事件、悪いのは誰?Photo: Adobe Stock

不動産の超怖い話。悪いのは誰?

 本日は「不動産の引き渡し後のトラブル」について解説します。ご紹介する事例は東京地裁令和3年7月20日判決のものです。

 不動産売買で一番嫌なのが、売買で引き渡しが終わった後のトラブルです。

 通常、引き渡しが終わったら、その案件については終了と思うかもしれませんが、中には引き渡しが終わった後に大トラブルが発生することがあります。今日ご紹介する事例もまさにそれです。

事例紹介

 売主である宅建業者は、昭和35年築の古いビルを取り壊して更地にする条件で買主xと売買契約をしました。金額は38億円です。

 ここでポイントになってくるのが昭和35年という古さです。こうした古いビルは都内にもたくさんありますが、ビルがいっぱい立ち並んでいるような場所の場合、外から見ると隣の建物とくっついているようなケースがあります。

 このビルもそうでした。基本的には独立したビルですが、外観上は屋上がくっついていて電気、ガス、水道を共有しているような状態でした。こういうビルは都心部に時々見かけますが、取り壊すとき大変です。

 特に、片方のビルだけ取り壊すとなると、外見上くっついているものを切り離すので、ものすごく気を遣う取り壊し作業になります。売主業者は慎重に取り壊しをして、その後買主xに引き渡しました。これが平成27年12月の話です。

 重要なのはここからです。

 買主xはこの更地をc社に時間貸しの駐車場として賃貸しました。ここまではいいのですが、平成28年10月自体が急変します。なんと、隣のビルの外壁の建材が剥離して時間貸ししている駐車場に落下したんです。恐ろしいですね。

 ポイントなのは、建物の外壁が落ちてくると、原因が特定して改善できるまでは落下予想地点については使用できなくなることです。もし外壁が落下して車に傷がついたらとんでもないことになりますからね。

 そのため、c社は15区画ある注釈区画のうち10区画を閉鎖することになりました。となるとどうなるかというと、買主xに影響が出てきます。

 xは月額480万円でこの土地をc社に賃貸していたんですが、10区画も閉鎖になってしまったので160万円に減額されてしまいます。

 その後、隣のビルのオーナーはすぐにビルの外壁の一部をネットで覆うという措置をとりました。

 ところが、建材の剥離がどんどん続いて、剥離した建材がネット内におさまらずに地上に落下してきて付近に散乱するという状況になりました。

 そこで怒った買主xは売主宅建業者とビルオーナーを相手に、ビルの補修工事と工事完了までの賃料減額分の損害賠償8878万円余りを求める裁判を起こします。

 ここで皆さん、疑問がわきませんか?

「外壁の剥離でビルのオーナーが訴えられるならわかるけど、売主で引き渡しが終わっている宅建業者まで訴えるのはなぜ? だって外壁が落ちてくるのって売主のせいじゃないのでは?」と思いませんでしょうか。

 この裁判、売主宅建業者への損害賠償請求は認められたのでしょうか?

 なんと8878万円が認められました。なぜなのでしょうか?