自民・公明は
別れられない“腐れ縁”

 このうち維新は統一地方選で躍進したが、全国政党化に向けては、まだ第一歩を踏み出したばかりだ(第329回)。大阪府知事・市長・府議会・市議会を完全制圧し、維新に所属する全国の首長・地方議員の合計は774人となったが、このうち505人(※)は近畿圏である。

※大阪府(320人)、京都府(39人)、兵庫県(92人)、奈良県(36人)、和歌山県(10人)、滋賀県(8人)の合計値

 維新の組織力は、まだ全国的に確立されていないのが現実だ。これでは、自民党が本気で「連立入れ替え」を検討するとは考えにくい。

 維新の馬場伸幸代表は、今年2月の講演で、自民党との連立について「自民党が守旧派と改革マインドの強い方に割れ、改革保守政党ができれば、そこへ参画する可能性はないとはいえない」と述べていたという。

 ここで着目すべきは、馬場代表が「自民党が分裂すればあり得る」という非現実的な条件を示していることだ。現時点では、公明に取って代わって連立入りする力はないと、馬場代表自身がよくわかっているのだろう。

 現実的な話をすると、仮に公明党が自民党候補に推薦を出さなかったところで、小選挙区での創価学会票が野党に流れるわけではない。日本共産党にも、維新・国民にもほとんど票は流れない。「左傾化」した立憲民主党に流れるのもごく一部にとどまるだろう。

 そのため、もし万が一、創価学会票が「自由投票」となったとしても、結局は多数の票が自民党候補に投票されるだろう。

 自公が連立政権を組んできた約20年の間に、公明党は安全保障等で自民党の政策を受け入れてきた(第104回)。一方で自民党は、公明党による「支持者への利益分配」の要求に応えてきた(第239回)。

 自公はこのように、政策のすり合わせを繰り返しながら関係を築いてきた。その積み重ねによって、両党に所属する政治家だけでなく、その支持者レベルでも結び付きが強まっている。これは選挙で重要なポイントだ。

 たとえ党幹部が激しく対立していても、公明党(および創価学会)の支持者が小選挙区で各党の政策を見比べた時に、「自民党以外」の政策を選ぶことは考えにくい。

 そうした事情からも、自公はお互いに不満を抱えつつも、維新・国民に取って代わられるほどの深刻な事態は起きないだろう。自公連立は、今後も政策や選挙態勢の面で、別れることができない「腐れ縁」として続いていくのではないだろうか。