現行スペーシアと大きく異なる車両を
東武が導入した最大の理由
6種類の座席をそろえる観光専用車両は鉄道業界広しといえども、プレミアムシートと3種類の個室、カフェラウンジを備える近鉄の50000系「しまかぜ」と、普通車とグリーン車、コンパートメント、グリーン個室、寝台などを備えるJR西日本の117系「WEST EXPRESS銀河」くらいだろう。
そのため(将来的には分からないが)スペーシアXは4編成の投入で、通勤ライナー運用もある現行スペーシア(9編成)の全てを置き換えるわけではない。当面は現行スペーシアとリバティを用いた「きぬ」「けごん」は存続しつつ、観光需要が大きい時間帯、曜日に観光専用車両のスペーシアXが運用に入る。
ではなぜ、性格が大きく異なる車両の導入に至ったのだろうか。東武は、最大の理由は旅行スタイルの変化にあると説明する。DRCがデビューした60年代はもちろん、スペーシアが登場した90年代でも団体で一緒に行動する旅行スタイルは根強く、コンパートメント以外は同じ仕様の座席として定員を増やさなければならなかった。
しかし、現在の旅行スタイルは国籍、年齢、性別、目的、乗車駅もさまざま。フラッグシップとしての存在感を持ちながら、多様なニーズに応えつつ収益を最大化する車両が必要とされた。
ダイヤも時代とともに変化している。DRC時代は浅草~東武日光を最短1時間41分、ノンストップで運転する列車が設定されていたが、80年代後半以降、停車駅が徐々に追加され、1997年に北千住駅、2001年に春日部駅、2003年に栃木駅、新鹿沼駅に全列車が停車するようになった。
この間、1992年に最高速度が時速120キロに引き上げられたにもかかわらず、所要時間はDRC時代より遅い約1時間50分で落ち着き、スペーシアXも同様となる。これは列車の使命が、浅草に集合した団体客を最速で日光に運ぶことから、各駅からの利用者を細かく拾うことへと変わったことを意味しており、加えてスペーシアXは車両に乗り込んだ瞬間から日光を感じる空間とすることで、移動時間も旅の一部として盛り上げる役割も担うことになる。
新たな観光特急を、利用者はどのように受け止めるのか。7月15日の運行開始が待ち遠しい。