中国の日系企業で働く中国人を日本で引き取る企業もあるが…

「中国の日系企業にとって、カントリーリスクは高まっています。撤退のシナリオが大筋ではないでしょうか」――。金融業界のF氏はこう語る。完全撤退にまでは至らないが、中国事業を縮小するなどの動きはすでに始まっている。

 ある製造大手の管理職G氏は「弊社の場合、今まで通り中国から調達するという方針は変わりませんが、新規の調達が生じた場合は、なるべく中国以外から調達するようにという通達が出ています」と話す。昨年、ホンダが中国事業を切り離してサプライチェーンを再編するという報道があったが、大手自動車メーカーの動きは、日本企業全体に影を落とす。

 もともと日本企業は、中国の拠点数を拡大させていて、それに応じて本社採用の中国人も増加する傾向にあった。しかし、昨今の米中対立を発端に中国からのサプライチェーンの切り離しを進める企業が続々と出始める中で、「中国との取引を前提にしていた企業は、日本での中国語人材の採用枠を減らしている可能性があります」とG氏は語る。

 ちなみに、G氏の所属する会社はロシアにも拠点があったが、ウクライナ戦争を機に活動を縮小した。その結果、これまで継続してきたロシア語人材の採用は打ち止めとなった。中国については「目下、中国の拠点を整理しているところですが、従来雇用していた中国人を日本本社で引き取るケースも検討しています」(G氏)という。

 そうなると、国内で新たに行う中国語人材の採用は必要なくなってしまうことになる。