SDGs、ESGといった言葉が一般化する中で、「サステナビリティ」もごく当然のように用いられ、浸透している。「持続可能性」と訳されることが多いこの言葉は、「サステナビリティ経営」などビジネスの世界でも無視することのできないキーワードとなっている。しかし、「サステナビリティとは?」と問われた際に明確な回答を持つ人は少なく、その回答自体もばらばらではないだろうか。
『サステナビリティ・ブランディング 選ばれ続ける企業価値のつくりかた』(伊佐陽介著)は、人それぞれの捉え方が異なり曖昧なものでありながら、企業経営にとって欠かすことのできない「サステナビリティ」と「ブランディング」という2つの要素を再定義し組み合わせることで可能になる企業の成長戦略をまとめた注目の書籍である。
今回は特別に本書から一部、4つの側面から創出する新しい企業価値の定義を抜粋して紹介する。

経営戦略としての<br />サステナビリティ&ブランディング

経営への
取り入れ方が課題

経営戦略としての<br />サステナビリティ&ブランディング伊佐陽介(いさようすけ)
株式会社バイウィル代表取締役COO
早稲田大学卒業後、一部上場総合不動産デベロッパーで住宅事業に従事。その後、(株)リンクアンドモチベーションにて、ブランドマネジメント事業部コンサルティング責任者に就任。2013年に独立し、ブランドコンサルティング会社(株)フォワードを設立し、2020年に同社代表取締役社長に就任。2023年には、GX事業を展開する株式会社Waaraを吸収合併。(株)バイウィルに社名変更し、代表取締役COOに就任。

 多くの企業でブランドを軸とした経営コンサルティングを行ってきた経験を踏まえて、多くの企業に共通する課題についてお伝えしたいと思います。裏を返せば、その問題点の解決のためにサステナビリティ・ブランディングは存在します。

 サステナビリティ・ブランディングが「サステナビリティ」と「ブランディング」の2つの要素から成ることは容易に想像がつくと思います。

 サステナビリティはもはや企業経営の前提となりつつありますし、日本国内におけるブランディングの端緒は1980年代半ばのCI・VIブームにあり、すでに40年以上が経過しています。しかし、その定義は? と尋ねられて明確に答えられる人は少ないでしょう。

 それも無理もありません。実際、それぞれ明確な定義はなく、人によって理解や解釈が異なるからです。

 多くの人はサステナビリティという言葉からSDGsやESGを連想します。株主や投資家、顧客対策としての必要性は感じていても、利益追求を使命とする営利企業が経営の主軸に据えて、企業価値の向上に役立てるのは難しいというのが一般的な認識でしょう。あるいは、サステナビリティは環境価値を高めることとおよそ同義であり、つまるところ地球環境の持続可能性を高めるためのカーボンニュートラルへの投資と同じこととして捉えている人もいるでしょう。少なくとも企業から対外向けに発信されるプレスリリースやIR情報などからは、そのように読み取れるものが多いのは事実です。

 ブランディングについても同様です。「イメージづくり」「ロゴ」「宣伝広告活動」「高級品」「(実態以上の)高価格での販売活動の実現」などを連想したり、抽象的に「付加価値を高める活動」「企業の競争優位を高めること」といった説明を頭に浮かべたりするかもしれません。このように多様な解釈が成り立つことから、ブランディングも定義が曖昧であることがおわかりになると思います。

 サステナビリティもブランディングも、定義が曖昧であるがゆえに、経営への取り入れ方がわからず、多くの企業で十分に活かしきれていないのが現状です。このことが冒頭で指摘した、どの企業にも共通する“課題”です。